相談室(ブログ)

強迫性障害のような症状で苦しんでいます。どうしたら穏やかに日々を過ごせるでしょうか(アメリカ在住30代女性)

2020.02.27

(質問)
米国在中の30代半ばの主婦です。40代半ばのサラリーマンの夫と2人で5年前にミシガン州に転勤しました。
私は小学生の時に拒食症になり、精神科に入院し、中学生の頃は3年間不登校でした。高校は夜間を卒業し、短大はとても大変でしたが卒業しました。小学生の時に拒食症になって以来、鬱や気持ちの不安、睡眠障害などを繰り返しています。

現在、米国で慣れない文化と言葉の壁でストレスが溜まり、食べても体重は増えず、この数年間でとても痩せて生理も来なくなりました。

毎日同じルーティーンで生活していないと不安になります。同じ物ばかり買って食べたり同じ所に行ったりしています。
1人で居る時は同じ事を繰り返し言ったり、意味のない言葉も言ったりしています。新しい事が有るとパニックになります。
潔癖症の様な症状もあり、1週間に1回はベッドのシーツと毛布を洗っていますが、割と大変な作業なのでとても疲れます。
1か月に1回くらいにしたいですが、同じ事を繰り返していないと不安になります。強迫性障害かもしれません。

もっと気持ちを緩やかにして生きたいですが、相談する人もいません。1人で自分の殻に閉じこもり1人で悩んでいます。
同じ事を繰り返していないと気がすまないですし、いつも先々の事を考え、疲れています。もっと適度に緩やかな気持ちで生きるにはどうしたら良いでしょうか。

(回答)
 臨床心理シランの室です。

海外生活の中で、よりどことなる友人との交流も途絶え、夫との会話も少なくなり、孤立した状態になっているようですね。そうした境遇があなたを弱くし不安を強めているような気がします…。
今のあなたにとって、最も大事なことはあなたの拠り所となる存在、相談できる人を持つことだと思います。

あなたの質問文の中で気になること…「同じ」という言葉が6度使われていることです。
同じことを繰り返さないと、不安であり、落ち着かなくて、気が済まないという心理状態に置かれているようですね。
原因はあなたの心にある不安の強さにあると思われます。その不安を同じことをすることによって緩和させようとしていますが、一時的安らぎに過ぎず、時間がたてば再び不安が湧いてくるので、それがあなたを疲弊させているような気がします。

あなたの不安の強さは、どこから来たのか…おそらく「拒食症」になったころに表面化されたとものと思われます。根本因はそれ以前にあったと思われます。家庭環境を推測するに、ご両親も大変だったと思います。あなたは、拒食症、不登校、鬱などになることによって自分の心を守ってきたのかもしれませんね。

そんな中、夜間高校、短大と精一杯の努力を重ね、学校を出られたことは立派だと思いますよ。
結婚され、「不安」は軽減された時期があったと思いますが、海外生活の適応からのストレスが強くなり、不安の強さが顔を出しているようです。

あなたと同様、多くの人が毎日、同じことを繰り返しています。私の例で言いますと、朝起きて、歯を磨き、顔を洗う、毎朝出勤前に、ラジオ体操をします。夜に軽いストレッチをし日記を書いて寝ます。それらをしないと、なんとなく落ち着きません。安心できないようです。

スポーツ選手には特に顕著に見られます。イチロー選手のバッターボックスでのしぐさ、相撲取りの相撲を取る直前のしぐさ、羽生選手のスケートリングに入る前のしぐさ、これらは一種の儀式のようなものです。そうすることによって緊張を緩和させ、不安を解消させて、落ち着かせているのです。同じことの反復行為には不安・緊張緩和という効果があり人間には必要なもののようですね。

また、「気が済まない」というこだわりの心理は「潔癖」、完璧を求めるあなたの性分に由来しているようですね。そうした性向は芸術家やモノ作りや職人によく見られます。
完全作品を求めて、何度も繰り返し完璧作品を目指していきます。理想作品と現実作品が一致するまで作り続けないと「気が済まない」からです。結果、素晴らしい作品の完成となります。一流のモノ作り人は、こだわりの人であり、強迫性傾向の強さをもった人たちといえるでしょう。あなたの性分もよい方に活かしていけば、きっとあなたに価値をもたらすでしょう。
これらは大事な人間の心理なのですが、ほどよくやることが大事になります。そこには、不安とどう向き合うのかとい課題があるわけですが…。

こだわりや不安の強さは、時に新しい変化に対応することを困難にすることがあります。柔軟性が不足し、思考の固さとなり自己のコントロールの弱さになってしまうことがあるからです。
その結果、新しい環境や出来事に遭うと不適応を起こしたり、パニックになったりすることがあります。

不確かな未来への想像が不安を生み出します。あなたの不安の多くは、あなたの想像の産物であり、頭の中で勝手に作り上げた世界であり現実ではありません。

自分の思考、行動、感情、生理というつながりを知ることですね。
強い不安は、時間とともに薄れるという性質があります。不安に襲われた時、頭の中であれこれ考えると不安は強くなりますので、目の前のやるべきことに専念していけば、不安は薄れます。時間とともに弱まるのも不安の特徴です。

人間には自然治癒力・回復力があり、大海のように何でも受け入れることができる母なる世界が内在していると言われています。それは母親に代わる安全基地になります。最終的には自己信頼の獲得が課題になりますが…。

不安を強める心理として、罪悪感、自責があります。必要以上に罪悪感にとらわれないようにしましょう。

自律神経の乱れから不安を強く感じたりすることもあります。軽い運動やストレッチやウォーキング、朝日を浴び、入浴。複式呼吸、背筋を伸ばした姿勢で歩くなどですも効果的だと思います。