相談室(ブログ)

宗教と心理療法(カウンセリング)の違いを教えてください。

2022.08.23

(質問)
心も神も見えません。神秘的なものを信じる宗教と心理療法(カウンセリング)は、共通点があると思います。どちらも見えないものを対象として、また見えない世界を信じるという点で。信じるに足りる宗教とはどのようなものなのでしょうか。また、信じられる心理療法とは、どのようなものなのでしょうか。

(回答)
とても、よい質問ですね。しかしこれに答えるのはとても難しいことだと思います。なぜなら、心の究明、つまり生命の究明がなされないと答えることは難しいでしょう。

古来、人間は生きる苦しみ、死ぬことへの恐怖や苦しみ、病気の苦しみ、また年老いていく苦しみ、貧困、人間関係など、あらゆる苦しみを乗り越えるために、人間を超えた何かの力を頼り、信じることから宗教が生まれてきました。つまり、宗教は、人間の苦しみの解決から生まれたものといってよいでしょう。つまり、宗教は人間が作ったものです。仏教しかり、キリスト教しかり、イスラム教しかり、ユダヤ教しかり、あまたの新興宗教も人間がつくったものです。

すべては、人間が作ったものでありながら、いつしか、人間を離れたもの(神のようなもの)が人間を支配するように変わっていきました。そのようにしたのも人間です。この点を明確しておけば、人間生命の正しい解明や理解が大事だということがわかります。

心理学も難解な心の世界を究明する学問ではありますが、まだ人間生命の心理的部分は、未解決でわからないところだらけです。ただ、信じられるものかどうかの基準は、それを実践した時の実証性です。エビデンスで100名実践して、100名すべてよくなれば、完璧といえるでしょう。しかし、鬱の治療にしても、「認知行動療法」がエビデンスが高いと言われていますが、果たして50%の治癒率があるかどうかといったところでしょうか…。次は理論性、科学性です。理論があらゆる科学を網羅していれば、それだけ治療の確実性も高いと言えるでしょう。身体医学は、精緻な分析知と高度な科学的究明の成果もあって、かなりの高い治癒率を誇っています。

心理療法も「心の解明」「生命の解明」に比例して、精度もあがってくると思われます。生命や心を解明していくためには、あらゆる学問を究め尽くし、広範な学問や社会のあらゆる知識に精通することが求められます。そうした広範囲の教養と知性を備えた心理療法家は優れたカウンセラーの要件を満たす人といってよいでしょう。