相談室(ブログ)

間違いのないカウンセラーの選び方

2019.04.01

「子どもがひきこもっている、どこに相談すればよいのだろうか…」「人間関係に疲れ、不眠で気力もわかない、いいカウンセラーはいないだろうか…」「服薬ばかりでいっこうに改善しない、根本的な改善をはかりたいのだが、いいカウンセラーはいないだろうか…」など、心の問題や病に関する問題をもちながら、カウンセリング先、心療内科選びで迷う方は少なくありません。

心療内科とカウンセリングルームですることの違いについて知識がない方も多くいます。(心療内科・精神科…診断後、症状を抑えるための薬物療法が中心。心理療法・カウンセリング…心理、社会、生物的要因を見立て、根本的改善をはかる心理療法を実施)

また、心理カウンセリング・心理療法について正しい知識をもっていないため迷っている方も多くいます。ここでは、そんな方に対して、カウンセリングやカウンセラーについての正しい知識を提供することによって、間違いのない、いいカウンセラー選びを助言します。

医師は業務独占資格ですから、免許がないと医療行為をすることはできません。免許なしに医療行為をすれば法律で罰されます。
それに対して、心理カウンセリングや心理療法には法律の規制はありませんので、誰でも心理カウンセリングを行うことができます。ここに、詐欺まがいのカウンセリングが入り込む余地が生まれます。資格も無資格から取得難易度の高い資格まで玉石混淆といった有様です。

心を病む人にとって、よいカウンセラーを選ぶことは、回復(治療)に大きな影響をもたらすことは言うまでもありません。心の問題だけでなく、心身の病の全てに当てはまることですが、いわゆる専門家と自称他称している者は、ピンからキリまで存在します。名医もいれば、やぶ医者もいるように、カウンセラーもさまざまです。これは、教育界、司法界などあらゆる分野に当てはまるものです。悲しいかな現在は詐欺の横行する時代であり、自己利益のために、人が不幸になることなど考えない人もいます。

心理カウンセリングや治療にとって最も危険なことは、カウンセリングや治療を受けることで、改善しないだけではなく、カウンセラー(治療者)不信になったり、病や精神状態が悪化することがあることです。つまり治療者によって新たなトラウマを作ってしまうことです。それは来談者(クライエント)の正しい見立て(アセスメント)ができていないことや、信頼関係ができていないなどの原因によります。

間違いのない、いいカウンセラーを選ぶ条件としては、以下の項目を確認してみるとよいでしょう。

1 カウンセラーの資格 2 経歴、経験  3 専門性(得意な心理療法)  4 カウンセラーの人間性、人生観
5 金額   6 場所   7 カウンセリングルームの雰囲気やスタッフなど

1 心理カウンセラーとして、どんな資格をもっているのかを確認する

企業が面接で人を採用する場合に、多くの面接官が、まず学歴を一つの採用基準にします。例えば一流大学に入るには、それだけの勉強や努力、投資をしているからです。また、一流大学を卒業するということは、多くの知識を習得しているとみることができ、また卒業生が実績を積み上げたりしていて、採用する側としては、学歴を一つの担保とみなすことができるからです。

心理カウンセラーも同様です。どんな資格をもっているのかが、まず大事になります。心理学の勉強や取得にどれだけの時間を費やし修業し、お金を投資してきたのかが問われるからです。以下に日本国内の心理カウンセラーの取得難易度を順番に列挙してみます。

SS、 ユング派分析家国際資格…国際的な資格で、日本人資格者は100人以下と言われています。受験資格を得るだけで4年かかり、取得までの費用は400万円近くかかるそうです。超難関資格といえるでしょう。

A、 公認心理師…心理の唯一の国家資格です。2018年に第一回目の国家試験があり、2019年2月から最初の有資格者が誕生しました。約28000人近くの有資格者がいます。 大学で心理学を勉強し、さらに大学院で心理学実習などをします。日本の心理職の最難関の資格と言えます。今後の活躍が期待される資格です。

A、 臨床心理士…民間資格ですが知名度、信用度とも高い資格です。大学院で所定の心理学や実習を終え卒業した翌年に受験資格が得られます。試験に合格することによって資格取得ができます。現在、約32000人近くの有資格者がいます。スクールカウンセラーのほとんどが、この資格の保持者です。また、心理職の採用求人の心理資格としては、臨床心理士(公認心理師)以外はほとんどありません。病院、学校、福祉分野では、臨床心理士(公認心理師)以外の資格を認めていないといってよいでしょう。公認心理師の8割以上は臨床心理資格保持者のようです。この資格は5年ごとの更新制があり、専門力を担保しています。公認心理師と臨床心理士は同等の資格といってよいでしょう。

B、 学校心理士、臨床発達心理士
四年制大学卒業が必須です。学校心理士は、大学院修士修了つか実務経験1年、大学卒業かつ5年の実務経験が受験資格になります。難易度の高い資格です。臨床発達心理士も心理学部卒業、大学院修士、3年の実務経験も必要です。学校心理士同様に難易度は高いです。この二つの資格保持者はスクルーカウンセラーとして学校に勤務しています。

C 認定心理士
認定心理士は大学で心理学の所定の単位を取得し大学を卒業すれば認可される資格です。試験はありません。公的な教育関係の仕事での採用は少しですがあります。

D 産業カウンセラー、メンタルケア心理士、メンタル心理カウンセラー、上級心理カウンセラー、ケアストレスカウンセラーなど
上記A~Cの資格に比べると、学歴や学科に関係なく、だれでも挑戦し取得できる資格です。講座受講期間や金額に差はありますが、
通信や、養成講座を修了すれば、受験資格が得られます。期間も半年以下であり、1か月以内で費用も数万円で取れる資格もあります。

その他、交流分析士、行動療法士、家族相談士など様々な資格があります。ネットで調べれば、取得期間や費用がわかります。

取得難易度の高い資格はSSからBまでと言えそうです。SSを除けば、公認心理師、臨床心理士、学校心理士、臨床発達心理士
となりそうです。これらの資格は、大学院修士レベルの学歴と、取得にかかる費用も膨大です。スクルーカウンセラー採用資格になっているのも一つの証拠といってよいでしょう。
また病院の心理職は、臨床心理士・公認心理師(稀に精神保健福祉士)しか採用されていません。その事実が資格の信頼度を物語っているといってよいでしょう。

2  心理職として、どんな経歴、経験、実績があるかを知る

いくら難易度の高い資格保持者でも、経験がなければ絵に描いた餅に等しいといってよいでしょう。私は中学教師を長く勤めていましたが、最初からいい教育や授業ができたわけではありません。3年間は失敗の積み重ねから学んでいく日々でした。4年目から、過去の経験を生かしての教育ができるようになったものです。多くの新規採用教師も同様で最初の1年目はとても苦労をしています。これは何も教師に限ったものではないでしょう。あらゆる職種に共通するものといえます。

心理職としてどんな経歴や経験があるのか、どこに勤め、どんな仕事をしてきたのかなどが一つの基準になります。

某県の臨床心理士会の規定では、開業カウンセラーは、臨床経験7年以上とあります。公的機関と違って、倫理性やカウンセリングの責任を考えると、そのくらいの資格取得後の経験は必要だと思います。

3  カウンセラーの専門性・得意な心理療法を知る

心の病(精神疾患)は多岐にわたっています。医師は医師免許を保持していれば、全ての病気を診察することが許可されていますが、実際は得意な専門分野のみを診察しています。現代の細分化された医学では、全ての分野をみることが不可能であることを知っているからであり、医療行為の責任や倫理観にもとづいていると思われます。

精神(心理)の分野も同じです。心の分野は科学性の光が当たっていない部分が多く、身体医学に比べて大きく遅れていると言われています。それゆえに、占いをはじめ誰でも携わることができる分野であり、危険性のある分野であり、似非カウンセラーが入り込む余地もあります。

心理カウンセリングの分野も全ての領域に対応できるというのは、逆に言えば専門性がないということを語っていることでもあります。そうしたカウンセリングは、ただ話を聞く程度の面接であり、改善への力になるかどうかは不明であり、専門性に裏打ちされていないといってよいでしょう。

専門性が高くなればなるほど、自分の力量の自覚もでき、できることとできないことの自覚ができるようになり、専門分野も明確になってきます。似非カウンセラーが専門性もないまま、クライエントに対応すれば、病を悪化させてしまいます。なぜなら、正しい見立て(アセスメント)もできず、改善プランも示せないからです。外科や内科のように治療の結果(レントゲン、検査数値など)が見えない分、責任を問われることもないので、一層の危険性があります。

心理療法の専門性を大きく大別すれば、以下の三つになります。

来談者中心療法  …広く浅く悩みや心の病に対応。
精神分析 …フロイトの神経症治療から始まった、神経症に適切な治療法。
認知・行動療法…うつ、不安、パニック、対人恐怖、PTSD(トラウマ)などに対応。エビデンス(治療実績)が高い治療法と認められている。
医師が実施すれば保険適用される唯一の療法(それだけ治療効果が高いとされている)

そのほか、上記の療法から派生したもので主なものでも、交流分析、ゲッシュタルト療法、支持的精神療法、臨床動作法、芸術療法、ナラティブセラピー、家族療法、対人関係療法、遊戯療法、グループ療法などたくさんあります。
また、日本で生まれた森田療法や内観療法もあります。
森田療法…神経症(対人恐怖・強迫性障害)、うつなどに効果的
内観療法…反社会的行為、非行少年に効果的とされていた
対人関係療法…摂食障害、トラウマ、社交不安障害などに有効

やはり歴史があり、研究実績があり、治療実績(エビデンス)の高い著名なものを選択するほうが間違いは少ないと思います。

4  カウンセラーの人間性を知る…誠実、責任感、奉仕の心、向学心、公平さなどの視点から

カウンセリングが人と人の関係の営みである以上、カウンセラーとクライエントの関係は症状の改善に大きな影響を与えます。かつて、抗うつ薬のプラセボ実験がありました。偽薬と本物の薬の治療効果を実験したところ、思ったほどの差がなかったと報告されています。処方する医師を信じれば治療効果が高くなり、疑えば効果が低くなると言われています。

かつての有名な宗教家が病を治すことができた多くの理由が信者が「信じる」ということから起きた奇跡であったと思われます。まさに「信ずるものは救われる」であり、そうしたことは心理カウンセリングの場面でも起こります。

クライエント(来談者)がカウンセラーを信じられるかどうか、その要素の一つになるのがカウンセラーの人間性です。

人間性…まず誠実な人。次に奉仕の心…悩める人の苦しみに共感し、改善のための努力を惜しまない人。人によって差別しない公平さのある人。人の心は不思議であり、10人のクライエントがいれば、10通りの療法が必要になります。改善のために、来談者に学び、先人の知恵に学ぶなどの向上心が必要です。

謙虚に学びのあるカウンセラーは、間違いのないカウンセラーの条件です。
一度面接をすれば、相性を含め、人間性も少しわかり、自分に合っているかどうかの見分けはつくと思います。また、ネット上で、プロフィールや考え方、人間観などの欄を参考にするのもよいと思います。

5  カウンセリング料金…カウンセラーが独自に決めていて相場はないが、認知行動療法なら8000円~10000円が対価として妥当。

料金は安いことにこしたことはありませんが、カウンセリングの対価ということを考えれば、ある程度の金額はやむをえないと思います。
高ければよいわけでもなく、安いのでカウンセリングレベルが低いというわけでもありません。それぞれのカウンセリングルームが独自に金額は決めています。決める基準は定かではありません。理想は安くて質のよいカウンセリングです。しかし、実際はなかなかそんなカウンセリングルームには出会えないかもしれません。

公的機関に勤務する臨床心理士の時給は、スクルーカウンセラーが約5000円、刑務所や学生相談室が3000円~6000円、保険適用のある病院では1500円~3000円ぐらいです。ちなみに、精神科クリニックで実費負担のカウンセリングは5400円~20000円です。

民間のカウンセリングルームは、保険が適用されません。当室で認知行動療法を実施するとき、カウンセリグ時間が60分~100分。事前準備、事後の分析整理、見立て、計画、記録などが2時間かかります。つまり、1ケースのカウンセリングにかかる時間は3時間から3時間半です。せいぜい一日にもてるケースは3ケースぐらいになります。時給2000円として換算しても6000円から7000円ぐらいです。このほかカウンセリングルームの維持・諸経費がかなりかかります。それを加算すれば、8000円ぐらいが妥当と思われます。

6  場所…通所しやすいところがよい。

カウンセリングは稀に初回で終わるものもありますが、通常は3~12回ぐらい(当室のデータ)かかることが多いです。長く通所することを考えれば、やはり通所に便利な近いところがよいでしょう。

7  カウンセリングルームのスタッフや雰囲気…できれば男女二人以上がよい。

男性のみとか女性のみではなく、男女両方のスタッフがいることのほうが多様なクライエントに対応できると思います。またカウンセリングが密室で行われることを考えれば、複数スタッフ(男女)がいることのほうが安心できると思います。
面接室などホームページで確認できる場合は、閲覧し面接室の雰囲気を知ることができると思います。

8  その他…口コミについて…話半分ぐらいにしたほうがよい。嘘が混じっていることがある。

私自身、かつて歯医者を選ぶ際に口コミ点数が地域で高いデンタルを選択し通院したことがありますが、まったく事実は違っていて、ひどいところでした。そのとき、口コミの内容は「さくらが書いたもの」と確信したほどです。以来、ゆこゆこの旅館選びなど、口コミ情報は一応は参考にはしますが、他の要素を重視し選択するようにしています。口コミにも巧妙な営利や儲け主義が入り込んでいますから、鵜呑みはしないほうがよいと思います。また、通所した方の言動も、個人差があったり、相性があったりするものです。Aさんにとって、名医であったとしても、Bさんにとってやぶ医者になる事例もある話です。やはり、総合的な判断が必要です。無知は不幸の入口になりますから、賢くならなければいけません。