私たちは意識するにせよしないせよ、今、生きています。生きているというのはまぎれもない現実です。それをよりよく生きるという方向に変えることによって、あらゆる苦しみ、不幸から脱却できます。よりよく生きるとは、どういうふうに生きることなのでしょうか。
多くの人は、過去の記憶やできごと、未来への不安、迷いなどが混在し無意識的な自動思考や観念に瞬間の意識は支配され、今の瞬間を何気なく生きています。
多くの人は、目に見える世界や五感で感じられる快適な感覚、便利さに流され、かけがえのない今の瞬間を惰性に過ごし、自らの深い世界を実感することなく表面的に生きているといってよいでしょう。
未来に対して頭の中で自動的に生起するネガティブな思いに支配され、いたずらに不安を生み出し、今の瞬間という新しい豊かな生命の働きを意識できていません。
生きることが、どちらの方向に意識が向いているのかが大事になります。過去の記憶やイメージに支配され、後ろ向き、消極的、受動的な生き方になっているのか。
それとも、何も意識せず感覚的・惰性な生き方、「慣性の法則」のような生き方なのか。
それとも今を明日に向け、前向き、積極的に希望を持って生きるのか。それによって人生は大きく変わります。よりよく生きるとは、今の瞬間を未来に向けて目的をもって積極的に生きることなのです。
今の瞬間に意識を集中し、目的をもって一生懸命生きることによっていつしか自らが持つ本来の素晴らしい力に気づき、それを湧現させることができます。自らの心身に対する正しい認識と覚知が、人間を高みに導いてくれ、自立と揺るぎない安心の確立、そして自己実現を可能にしてくれます。
今という瞬間に過去はなく未来もありません。過去は記憶に過ぎず、未来は想いに過ぎません。明日は永遠にありません。いつも今しかないのです。今日しかないのです。今の瞬間は常に変化しています。そして細胞の新陳代謝のように新鮮に呼吸しているのです。その瞬間には豊かな智慧の律動が秘められているのです。瞬間の生命の有り難がたさの認識から新たな人生が開かれます。
ヒマラヤの旅人