相談室(ブログ)

森田療法でパニック障害や強迫観念は治りますか?

2020.03.15

(質問)
現在20代後半の男性です。1年前にパニック障害になりました。心療内科で薬物治療を受けていました。
また認知行動療法を勧められ、集団認知行動療法を数か月受けましたが改善が実感できません。休みをとりつつもなんとか、仕事は続けていますが、心臓発作に対する恐怖、広場恐怖、息苦しさ、のどの詰まり感覚、そして非現実感などもあります。夜は呼吸が息苦しく、なかなか寝付けません。日々の生活が苦しく、何をやっても楽しくありません。今は心療内科には行っていませんし、服薬もやめました。

ネットで調べてみると、森田療法が効果的とありました。そこでは1か月の入院治療が必要と説明されていましたが、
入院治療しか方法はないのでしょうか? もし通所指導やカウンセリング治療があれば、受けてみたいと思います。

(回答)
当室では、外来の個人面接のみをやっています。あくまで森田療法を中心に位置づけ、認知行動療法や心理教育、心理検査も取り入れ、多角的な取り組みをしています。

回復例としては、あなたと同じような不安神経症タイプ(パニック障害、不安障害)と強迫性障害があります。
日記療法、自己観察記録をもとに面接しています。症状は、あくまでその人全体の一部分であり、症状除去のみではなく、人間全体(生活リズム、性格や気質の活かし方、生活習慣、考え方の癖など)の変容が課題になります。

当室で面接した人に共通して見られた傾向として、内向、神経過敏、不安定、ちょとしたことが気になるという特徴がありました。神経過敏が恐怖と結びつき、その呪縛から抜け出せなくなり、不安維持させています。

神経過敏は過度の緊張と興奮から起きます。神経過敏が体の少しの異常感覚をとらえ、恐怖、死に至る病→根底に死の恐怖)の引き金になっています。神経過敏は、疲れ、強度のストレスなどだれにでもあることですが、問題はそれがあるとき恐怖と結びついたとき、このからくりから抜け出せなくなってしまうようです。

 不安と生理の連動…不安は自分のイメージが作り出しているということです。すすきが幽霊に見えるのは、不安が作り出す不安のイメージの投影でもあります。不安を除こうと、安全確保しないことです。異常感覚があっても放置してみるとよいでしょう。回避行動や安全確認をせず、そのまま不安にみをゆだねるもつまり曝すことです。大丈夫と思って、身を任せることです。その体験の積み重ねが自信になっていくでしょう

そもそも健康とは、雲の一片もない青空ではなく、雨あり、嵐あり、風あり、そして晴れがあります。これらすべてが
人間の健康の一面といってよいでしょう。健康に対しての要求が強すぎているようです。生きる欲望が強いようです。それはとても素晴らしいことですが、それが身体の健康へ囚われてしまうと、苦しみになってしまいます。

健康とは、一つの完璧な状態ではなく、日々変化するものです。不快感もない快適さを保った状態はありません。快状態と不快状態は表裏であり、健康と病気は鏡の表と裏の関係ともいえます。不快があるから、快適さのありがたさがわかるのです。いつも快適でありたいという良く自体が誤った考えなのです。不快感を受け入れるようになることです。不安や恐怖は不快のさいたるものでしょう。しかし苦痛は苦痛として痛みは痛みとして、言葉で「評価」せず、そのまま受け入れます。

それが、今を受容するということであり、「あるがまま」(森田療法のキーワード)の体得です。

恐怖や不安と一緒に、戦わず逃げず、時の経過に身を任せます。そうすればやがて、不安や恐怖は消えていきます。その繰り返しの経験の中で、自己受容が進み、安心、そして自己信頼感が強くなっていきます。それが全治といえるでしょう。