相談室(ブログ)

目先の欲に振り回される愚かさが苦しみを招く

2023.01.14

 飛んで火にいる夏の虫
 夏の夜、多くの虫たちは灯りを求め、火とは知らずにその中に身を投じて死んでいきます。灯りの正体が火であることを知っていれば、そこに近づくこともなかったでしょう。つまり、灯りを求めた欲(本能)が先のことを考えずに行動し、その結果が招いた不幸です。これは、何も虫の世界のことだけとは言えません。
 
 現代社会は、欲望追求社会であり、経済優先社会であり、「売ること」「利益を得ること」が至上の価値のようになってしまっています。例えば食べ物であれば、見栄えや味をよくする、加えて安価であればお客は寄ってきます。テレビコマシャールの視覚に訴えるための涙ぐましい努力の裏には「良く見せる」そして「売る」という心が見えています。多くの人たちは、操作された情報に疑うこともなく、商品の中身の実体も確かめることもほとんどありません。

食べ物の中に使用されているかもしれない添加物や素材の劣悪さなど知ろうしません。結果、食べ続け病気になっても、まだ真実に気づかない人は多くいます。食べ物に関して言えば、日本は添加物大国であり、世界でも添加物の規制がゆるい有数な国なのです。外国で危険性が高いということで禁止されている添加物も使用が許可されていると言われています。
 節制を知らない食べ物への欲の強さが、ものごとを見極める目を曇らせ、まるで「とんで火にいる夏の虫」と同じ行動をとっています。目先の欲に振り回され、先を見ず、行動した結果、苦しみを味わう人を多く見てきました。
 
 何も食欲だけではありません。人の金銭欲は凄まじいものがあります。現代社会は「拝金主義」の宗教信者で溢れていると言われています。金さえあれば何でもできる。金があれば人の心さえも買えるという浅薄な思想です。金が欲しさに、盗みや詐欺をしたり、賄賂をもらったり、平気でうそをついたりします。さらにお金のために親子や兄弟の醜い争いを引き起こし、大事な肉親を失う結果になることもよくあることです。様々な不正の根本の原因に、お金に対する目先のあくなき欲(貪欲)と執着が見られます。悪事が発覚したら、どうなるのかという先のことは、強欲が曇らせるのです、お金のもつ快感に理性が麻痺するからです。
 
 仮に、社会の法律を潜り抜けたとしても、人間の行為は全て脳に記憶されると脳科学は教えています。そして人は、死ぬ瞬間に生前の行為のすべて見る儀式が訪れるとされています。つまり、自分が自分を裁く時間が死の世界の入口で行われるのです。これは厳しい瞬間です。人や社会は騙せても自分は欺けないということです。
 
 社会的地位(管理職、課長、社長)を得るため、人を押しのけたり、傷つけたり、また自分を押し殺し、上司の言いなりになったりしている人は、まるで先のことは見ていないかのようです。そうした行為がいかに浅ましいことなのか。人間として恥ずかしいことなのかを考えていないような癡(おろか)な行為です。例え、地位を得たとしても、人間としての信頼を失ったり、自分らしさを失ったりし、周囲の人から軽蔑され、人間としての信頼はなくなってしまいます。小を得て大を失ったことに気付かないほど愚かにさせるのも目先の欲への執着なのです。欲のため「火の中に飛び込む虫」のように癡なことです。
 
 異性に対する欲、性欲、不倫、盗撮、わいせつ行為、ギャンブル欲、DV、虐待、暴力、支配欲、名誉欲、など種々の欲で先が見えなくなる人間の愚かさが、自分も人も苦しみに誘い、地獄を味わうことすらなりかねません。
 
 心が不調、あるいは子どもに発達障害の傾向がある、または不登校などの理由で、すぐに心療内科や精神科を受診する人がいます。これも目先の欲(精神科にかかれば治る、改善できると信じる。そして疑うこともなく、服薬し、副作用に苦しんだり、薬依存になり、根本的には治らず、病院通いが長期間にわたる)にかられた行動の一つです。まずは、自分や子どもの状態を正しく知ることが大事であり、精神科医療が何をするのかを知ること、さらに薬について知ること、そうしたことが無知による不幸を防ぐ賢明さなのです。精神医療を妄信せず、自分で確かめ考えることが依存を防ぐ自立の道にもつながります。

 本当の知性(智慧)とは、行動をコントロールできる智慧であり、後先をきちんと見極められる智慧であり、行動を抑制できる知性なのてす。それは日々の欲とのせめぎあいの中で、立ち止まって先を見つめるという行為(知性の戦い)の積み重ねの中で磨かれ、身につけていくものなのです。机上の学問ではなく、実践知であり、体得智ともいうべきものです。こうした智慧が、目先の欲に潜む愚かさを見抜き、自立した人間を作っていくのです。