相談室(ブログ)

感情は意識ではコントロールできない。どんな感情もあるがままに受け入れれば苦しみから解放される。

2023.04.26

 人間は、思考を持った感情の生きものです。「思考を持った感情のマシーン」と表現した神経学者もいます。つまり感情が人間全体をコントロールし、思考はその一部です。とすると思考や意識で感情はコントロールできないことになります。では感情をコントロールするにはどうしたらよいのか…。
 それは今の瞬間を生きるということです。今の瞬間に意識を集中することです。人間は意識を含めた6つの感覚器官があり、この6つの感覚器官が感情を受信しています。特に5感覚器官(眼、耳、鼻、舌、身)です。身体の感覚と脳の働きです。詳しく言えば、脳内の神経伝達物質が人間の感情を操作しているといえるでしょう。
 
 人間が求める最高の気分、それは歓喜。ベートーベンは、それを「喜びの歌」で表現しようとしました。生命の中から沸き起こる喜び、歓喜に勝るものはないでしょう。つまり人間の感情の最高のものが歓喜という喜びなのです。もっとも、最低の感情が苦しみにまつわるものです。とするならば、感情は苦楽に集約されると言ってよいと思います。
 怒りイライラ、焦り、満たされない、不満、不利益、馬鹿にされる、下に見られるなど。つまり、ブッタ(釈迦)が説かれた地獄界、餓鬼界、畜生界、修羅界の生命が苦しみに最もかんけいしてきます。この生命感に入る感情を分類すれば、人が避けたい感情がはっきりします。心が沈む、心が締め付けられる、心が閉じ込められる、心が苦しい、心が思い通りにならないなどは地獄界の感情です。心が焼き付くように満たされない、心がとらわれる、これらは餓鬼界の感情です。不安や恐怖は畜生界。恥ずかしさ、馬鹿にされた、見下げられた、などは修羅界の感情です。これらが苦しみの主な感情であり、いずれも苦しさを伴います。
 
 逆に楽しみの感情は嬉しい、天にも昇る気持ち、満足、ご満悦、充実感、満たされた思い、長く続く喜び、永続する喜び、快楽、気持ちがいい、気分が良いなど、人間が最も求めている感覚です。これらも多くは餓鬼、畜生、修羅から得られます。または自分に打ち克つことで得られます。それは人間界に伴うものであり、また天界に属するものになります。
 これらの感情は、いずれも身体5つの感覚器官+意識が脳を通して感じるものなのです。しかし環境が変わると感情も変わります。今述べた世界をブッタは六道の世界と名付けました。これは、環境に左右されやすい世界ですが、自らの力で関係する環境(例えば、苦しい職場に行かない、嫌な人を避けるなど)を変えることもできます。

 しかしどんな感情も長続きはしません。何かを達成した時、例えば合格や宝くじが当たったなど。その時は最高に嬉しく喜びの絶頂かもしれませんが、そのもすれば感情は数日も続くでしょうか。反対に怒り、この感情も1 日も続くものでしょうか。悲しみ、例えば愛する人が死んだとします。その悲しいみは、自然にしておけば3ヵ月でかなり薄れていきます。
 
 つまり今の瞬間、目の前でやっていることに対して意識を集中していくと、感情は薄れていきます。なぜなら今、意識を向けている、それに伴う新しい感情が生起するからです。だから、嫌な感情から離れるには、その嫌な感情に伴ういろいろな雑念観念をそのままにして雑念の流れるに任せます。そして今やっていることに意識を集中します。それが習得できれば感情に支配される事なく、苦しみの感情から解き放たれていきます。
 臨床心理シランの室の「セルフ感受療法」は、その修得を目指しています。