相談室(ブログ)

カウンセリングと心理療法と精神科の治療の違いを教えてくれますか。(30代男性)

2023.06.01

回答
 
 カウンセリングと心理療法を同じように理解している人が多いようですが、全く別のものです。
カウンセリングは相談という意味です。心理相談、進路相談、結婚相談、家族の相談、化粧品の相談など、話を聴いて何かアドバイスをするというぐらいの意味です。ですから、心理カウンセリングが心理状態の本格的な解決を目指すというものではありません。
 
 一方、心理療法は、認知療法、認知行動療法、森田療法など、症状を見立て、解決の手立てや方法を持ったものです。本格的な心理状態の回復を目指すものです。ですから、研究され、科学的な効果的な治療実績(エビデンス)が問われるものです。
 現在、科学的効果実績の高いものとして、認知療法、行動療法、認知行動療法、対人関係療法などがあげられます。また、不安症・神経症(パニック障害、強迫観念)などには、森田療法が効果実績が高いと証明されています。また、遷延化(なかなか治らない)鬱には、マインドフルネス認知療法の効果が高くなっています。
  
 精神科医の治療は、精神療法と言われています。そもそも精神科医の治療は心理療法が中心でした。精神科医が行う心理療法は精神療法と言われています。日本で生れて世界的に広まった森田正馬氏の森田療法はまさに心理療法そのものです。40年前までは、精神科では心理療法(精神療法)が中心でした。行動療法や認知療法は精神科医が治療で使っていました。現在でも、行動療法の第一人者は精神科医が大半です。
 
 しかし、30年前ぐらいから、精神科クリニックが急増し、その数も現在の4倍以上になり、名前も「精神科」という名前を使わず、「心療内科」「心理クリニック」、最近では「ストレスケアクリニック」「メンタルクリニック」など、誰でも利用できる親しみやすい名称で個人開業が急増しています。
 
 精神科という敷居の高さはなくなり、誰でも気軽に利用できるようになり、どの心理クリニックも、今では予約がとれず、3か月待ちが当たり前になっています。精神疾患者が増えたのか、情報社会の結果なのか。正しくは、マスコミ操作により精神疾患者が急増された結果です。そして、精神科での薬物治療で改善できず、患者が通院し続け、患者が溜まっているからです。
 テレビコマーシャルで製薬会社が流した「うつは心の風邪」というものが、大ヒットし、多くの人が心理クリニックを利用するようになりました。次の流行は「発達障害…薬治療」でした。今は、「大人の発達障害」が大流行しています。すべてマスコミと専門家と製薬会社の連携プレーの結果です。

 精神科医から心理療法はなくなり、薬物療法一辺倒になってしまいました。私も北九州市で心理療法をやっている精神科医の存在を知りません。そのクリニックで心理療法をやっている人がいるとしたら、雇われ臨床心理士か公認心理師です。利用者に聞くと、心理療法というより、心理カウンセリングといった色彩の強い感じを受けます。
 
 なぜそうなったのか、理由は大きく二つあります。一つは、現在の精神科医は、大学で薬理学を中心に学び、心理療法はほとんど修得していないと言われています。だから、心理療法ができないといってよいでしょう。(「ブラック精神医療」米田倫康著を参考)もう一つは、心理療法は一回50分近く時間がかかります。採算がとれません。薬物療法であれば、5分から10分で面接が終わります。「5分間治療」と揶揄されていますが、それが現実です。実際に心理クリニックに行かれた方は納得できると思います。
 ですから、現在の精神科医の治療は患者への薬の投与が中心になります。

 以上のことを考えれば、あなたが、どこにいけばよいのか判断できるのではないでしょうか。