相談室(ブログ)

 人はまず好き嫌いで評価します。感覚重視の生き方では幸福になれません。 

2024.06.21

日本は世界でも有数な安全平和社会であり物質的に豊かな便利社会です。それなのに、なぜ社会不安障害、適応障害、うつ、ひきこもり・不登校などの心の不調者が増加するのでしょうか。

物質的豊かさの追求とその享受、便利社会とその恩恵に反比例しているのが、心の豊かさの喪失です。つまり、心はますます貧しく、乏しく脆弱になっていきます。

 

人は生きるため快適さを欲し、安全を求めます。これはあらゆる生物、動物の持つ本能です。人も動物の一種です。本能とは本来的に持つ神経の働きです。1万メートルの上空をすいすい飛ぶ鳥、神業と言えます。また水圧に抗して生きる深海魚、やはり神秘としかいいようがありません。

人も、どんな動物にも負けていない不思議な本来的な生き抜く身体を持っています。

一例をあげれば、人は生き抜くために、空腹を感じる働きをもっています。空腹感がなければ、人は食べることをしなくなるでしょう。また舌の味覚がうまさを感じなければ、食べものを求めなくなるかもしれません。空腹も味覚も人に具わっている不思議な生き抜くための働きなのです。

人が他の動物と異なるのは、二本足で歩行ができ、手が使えること、大脳皮質が発達し言葉が使え、記憶をもとに思考できる働きをもっていることです。

人は生きるために不快を避けます。恐怖を避け安心を求めます。つまり好きか嫌いかという感覚が生きるために一番に反応します。それは人間の行動原理の第一法則です。誰人も、この法則に則って生きています。

今の苦しみや楽しみは、人の五感(目・耳・舌・鼻・身)に発した生きるための欲求の結果です。自らの欲求を知り、その調律の仕方を知ることが心の不調を改善する要諦になります。自らの心を明るい鏡に映せばわかるようになります。

人の生き抜くため行動に潜む「癡・おろか」さについて述べてみましょう。

痴…おろかとも表記します。ものごと、人間、自然の法、因果や道理がわからず、目先の感覚的欲求に抗しきれなく行動する心的状態です。

「飛んで火に入る夏の虫」暗闇の光を求め、火に入り、焼け死んでいく虫たち。このようなことは人間社会にもたくさんあります。お金のために大事なものを失うのも愚かさ、好きなものを食べ過ぎたり、飲み過ぎたりして病気になるのも愚かさ、専門家に騙されるのも愚かさ、人を傷つけることも、殺し合うのも愚かさが原因です。すべて生き抜くために自分を守るための行動が発端になっています。

病気の多くは、正しい知識の不足、道理や因果が分からないことから生じています。正しい知識や情報を身につけることが病気を予防します。「知は力なり」は真実を穿(うが)っています。

病の治療を重視する日本の医療界、既に後手に回っています。真の文明国は、病気にならないための予防に重点を置き、健康維持に先手を打ちます。

世の中、偽りの情報、利己的金儲けのための巧みな情報、偽善に満ちています。無知な人たちをだます似非専門家たち。視覚情報に弱い人間心理につけ込むコマーシャルやユーチューブ動画など。見抜くのは大変なことです。甘言で人の保身を増長しています。

この愚かさの病・痴病が現代人を覆っていると言えます。国民に本当の学びが少なく、表面的な浅い思想につかりきっているように思えます。拝金思想、刹那主義、コンビニ信者が文明国を席巻しているようです。

仮初(かりそめ)の平和に守られ、便利さに忍耐心を失い、人々は自らの生をよりよく保とうと快適情報にますます依存し、生きる力を弱め、脆弱性(ぜいじゃくせい)を強めています。

その結果、心の病はますます増産されていきます。生きること、身を守ることに潜む愚かさが原因と気づかずに…。それを乗り越える方法は、まず正しい知識を身につけ、正しい情報を見抜く智慧を培うことから始まります。

芝蘭の便り