(質問)
私が小学四年生の頃に親が離婚しました。離婚した理由は簡単に言うと母親の浮気です。
難しく言うと母のパート先で母にストーカーをしてくる人がいました。その人は昔捕まっていたこともありました。その人から「今の旦那とわかれて俺と住まないとお前の子供二人とも殺してやる」と言われたそうです。
そして母はとても私たちのことを大事にしていたので別れてそのストーカーと私と私の兄と4人で住むことになりました。一緒に住むにつれて私の日常は地獄になっていきました。毎日のように母にDVをする光景を見せられてきました。殴ったり、蹴ったり、根性焼きを入れられたり。私達に危害が加わらないように母は私たちを守ってくれました。
ある日母が首を絞められ殺されそうになったので「助けて」と叫び続けました。そしたらあいつが「それ以上叫んだらお前を最初に殺すから」と言われました。7年経った今でもその光景は鮮明に覚えています。その後の記憶は全くなくて、なんとか全員生きてきました。
中学生時代は小学校時代の自分の生活を必死に忘れていましたが、高校生になり、また思い出してしまいました。そこから毎日晩に泣いてしまい、学校に行く気力もまったくでてこず、集中も出来ません。友達にも「どうして、貴方だけが幸せそうに暮らせるの?」と思ってしまいます。過去のトラウマはどのように忘れたらよろしいのでしょうか?
回答
辛い思いをしたてきたあなたは、きっと人の心のわかる優しさを持つ人だと思います。朝の来ない夜はありません。生き抜いて、優しさの少ない今の社会の中で、恵まれない環境にいる人たちの味方になってください。そのためにも、今の苦境を乗り越えられ、心の強い賢明な人となり、前を向いて生き続けてください。
世界の偉人もみな酷いいじめ(迫害・虐待)に遭い、逆境の中で、それを乗り越えたからこそ、心が鍛えられ強く賢い人間になってとも言われています。
ガンジーしかり、ヘレンしかりです。あなたの生きる権利は絶対であり、幸福になる権利も絶対です。
「汝の運命の星は汝の胸中にあり」(シラーの名言)
あなたの運命を決するものは、あなたの心の中にあるという意味です。幸福・不幸もあなたの今後の生き方にかかっています。環境は私たち人間に大きな影響を与えます。とくに子供時代は環境の大きな影響から免れることは困難です。周囲の大人に頼られないと生きていけないのも事実です。
あなたの子ども時代…悲惨な家庭環境、そして養父のDV。
それらの出来事は、心の傷となり、消化されることなく、あなたの心に沈んでいるかのようです。そして、時折疼き、あなたの行動に負の影響をもたらしているような気がします。
私的な事例で恐縮ですが、私は母親を6歳で亡くし、父親は酒まみれの生活を送り、酔っては子どもに包丁を振り回したりしていました。兄弟は7人。家に食べ物もなく、ほったらかされ、食物を求め山野や市場をさまよい、学校にも行けなくなりました。やがて養護施設収容になりました。当時の養護施設は弱肉強食の世界であり、暴力いじめはひどく、職員の体罰や差別は露骨であり、学校でも「施設の子ども、汚い、近寄るな」などと暴言を浴びせられました。
いつしか、私の心は屈折していたようです。しかし、そんな少年にも、ある保母が目をかけてくれました。また、中学校の先生が私を信じ期待してくれる人もいました。そのおかげで人間を信じることができたようです。施設を出て自由になったにもかかわらず、高校時代に自分がわからなくなり、非行に走り、高校中退しました。
東京で一人で再出発をはかりましたが、目標もなくパチンコ、競馬にふける日々でした。そんなとき仕事先の牛乳店で、ある青年に出会いました。彼は虚勢を張った私を認め、人間として尊重してくれたのです。私は彼に心を開くようになりました。それ以降、私の人生は大きく転換していきました。後年、私は大学に入り中学教師になったのも、彼との出会いがあったからでした。拙著「失敗もいいものだよ」ノンフイックション自伝小説に詳細は記載しています。
もとより、生きている時代も性別も異なります。ですが基本は変わらないと思います。人は人によって傷つきもし、人間不信になったりするのも事実です。しかし、逆に人によって人間の温かさ、優しさ、温もり、この世界の美しさなどを知り、心を開き、人を信じることを覚えます。それらは、生きる活力となり、希望となっていきます。
あなたも、生きていれば、きっとよい出会いが訪れると思います。そのためにも、前を向き、今を誠実に真心こめて生きていくことだと思います。
トラウマの癒し…自己治癒について少し説明します。
長期間の虐待による複雑的心的外傷体験は、ある意味「冷凍された体験」のようなものです。冷凍されているが故に、心はその体験を過去のものとすることができず、いつまでも新鮮なままで抱えることになります。いわば「現在に生き続ける過去」として、さまざまな心理的な機能に影響を与え続けています。心的外傷を癒すということは、その凍りついた体験を解凍し消化吸収していくことだと考えられます。自力で難しいのであれば、スクールカウンセラーに相談するとよいと思います。
幸せで快適な出来事は心的外傷の癒しに重要な役割を果たします。楽しく、未来が展望できるような、積極的生き方ができるようなできごとを日常生活の中で作ることが大事です。
自己治癒力を高めるいくつかの方法をのべてみます。できることからやってみるとよいでしょう。
・親戚や友人らと良好な関係を維持する。
・危機やストレスに満ちた出来事でも、それを耐えがたい問題とみないようにする。
・変えられない状況を受け入れるようにする。
・現実的な目標を立てて、それに向かって進む。
・不利な状況であっても、決断し行動する。
・長期的な視点を持つ。
・希望的な見通しを維持し、よいことを期待し、希望を思い描く(イメージする)
・心と体をケアし、定期的に運動し、自分の気持ちに注意を払うようにする。