相談室(ブログ)

大人の発達障害・アスペルガーは、WAIS-Ⅲ検査でわかるのでしょうか?(20代)

2019.12.01

質問
WAIS-Ⅲを受けただけでは発達障害の診断までには至らないと聞きました。
「あなたは〇〇です」ときちんと診断されるには、あとどういった検査を受けなければいけませんか?
診察で医者は「アスペルガー症と言ってもいいと思います。」と濁したような回答で終わってしまいました。それが納得いかないのです。

回答
少しだけ納得がいかないというあなたの気持ちよくわかります。医師の「アスペルガー症といってもいいと思います」という断定を避けた曖昧な言い方であれば、不安は残るでしょう。

医師が断定を避けたのは、「アスペルガー症候群」の診断の難しさにあるようです。
専門機関で研究はされていますが、「アスペルガー症候群」の診断のよりどころとなる心理検査は開発中と言われています。

専門の精神科医でも大人の発達障害を診断できる医師は少ないと言われるほどですから。

アスペルガー症候群は2013年、アメリカ精神医学の診断基準DSM-5が使用されるようになり、日本の精神科医もそれを使用しています。発達障害の分類も変わり、アスペルガー症候群は「自閉症スペクトラム」という名のもとに大きく括られるようになりました。
診断は症状がどの程度あるかによって、診断基準DSM-5に照らし診断します。

診断はまず、本人やご家族からこれまでの発達の過程を聴収することで行われます。とくに小学校に上がる前を含む幼少期、児童期の対人関係がどうであったかが決定的に重要になります。

本人だけの症状の説明や対人関係上の問題だけの説明だけでは、診断が偏ってしまうからです。家族(親)から、本人の発達の経過の説明がなければ診断は困難をきたすでしょう。

WAISの結果には「アスペルガー症候群」の特徴が出ると多くの研究が報告しています。言語性知能が動作性知能を上回るという傾向がはっきり出るからです。しかし、この検査も、あなたが調べたように、一つの資料であり絶対ではありません。

あと「投影法検査」というものがあり、これは検査者が意識的に操作できない部分があるので、かなり有効な心理検査となっています。「アスペルガー症候群」に有効なのは「PFスタディー」という心理検査だと言われています。その他、描画テストやロールシャッハテストなどを組み合わせれば、かなり確実な診断になるでしょう。

以上述べたように、大人の発達障害…アスペルガー症候群の正確な診断は、本人の話、家族の話、心理検査の組み合わせなどが必要になります。

先生はあなたの話とWAISの結果をよりどころにしたのでしょうか? それで確定診断ができなかったのかしれません。もしくは、軽度の「アスペルガー症候群」という診立てだったのかもしれません。

確定的な医師の診断がほしければ、先生に診断の根拠を尋ねるか、セカンドオピニオンとして病院(先生)を替えて診察してもらうかです。

診断は両刃の剣のようなものです。診断名がつけば安心できる部分がありますが、その疾患故に苦しむという部分があります。実際、障害者として生きるのは大変なことですから。

著名な専門家に言わせれば、発達障害は「発達のアンバランスの問題だ」と言っています。一般の人より優れた部分もあるし、また劣っている部分もあるということで、発達のデコボコ状態だと言っています。

健常者(普通の人)でもアスペルガー傾向が見られます。誰でも大なり小なりその傾向はもっているもので、程度の問題なのです。あなたが、日常生活に支障を来していなのであれば、問題はないと思いす。

よく例に出される代表的な有名人…アインシュタイン、ピカソ、ビル・ゲイツなどの方々も、発達障害ではなかったのかと言われています。彼らは秀でた特徴を最大限に生かし、自らの適性を最高に活かした人たちです。

診断名より大事なことは、最終的に、あなた自身が自分の性格や能力や適性をどれだけ理解できるかだと思います。自分をよく知って、欠点を補い、良い面、長所を生かす生き方を積み重ね、努力していけば問題なく生きていけるようになると思いますが、どうでしょうか…。