(質問)
10代後半のころから嫌な考えが頭をよぎることが多いです。普段からマイナス思考というか、危機感が強すぎるあまり、家族が運転中に事故に巻き込まれていたらどうしよう。」「自分ではつまらない考えだとわかっていても、ふとした瞬間に頭によぎってきます。中でも辛いのが、殺人衝動が出ることです」。「ふと頭をよぎると、必死にやらないように頭で色々と考えながら戦います。
強迫性障害傾向による症状と推測します。その見立てにそった対処法を述べてみますね。
あなたと似たような症状で苦しんできた人を、これまで数多く面接してきました。
〇20代前半男性の事例…友だちと二人で自分のアパートで寝ていたとき、突然、隣に寝ている友達に対して「首を絞めろ!」という言葉が浮かび、恐ろしくなり、その言葉に抵抗し戦い、数時間を費やし、心がくたくたになっていしつか眠っていた。それ以降、人に害を加える言葉が次々に浮かび、自分を苦しめた。
〇10代男性の事例…あるとき、「母親なんか死んでしまえ!」という言葉が浮かび、自分では全く思っていないことなので、おそろしくなって、その言葉を打ち消そうとしても、なかなか消えずに苦しむ。数日後「父親なんか死んでしまえ」という言葉に変わった。一週間後には、「お前なんか死んでしまえ」という言葉が浮かぶようになり、道路に出て、車に突っ込もうかと考えたが怖くなって、思いとどまった。
◎解決方法について…認知行動療法的アプローチと森田療法的自覚療法が有効と考えます。当室で面接をした人たちは、そのアプローチで克服していきました。
〇心理的からくり。
・嫌な思いが浮かぶ⇒緊張・興奮⇒「闘争か逃走か」…さらに神経は過敏になる。
・「闘争」嫌な思いを打ち消す、考えないようにする、意識して他の行動をしようとする…やりくりすること。「逃走」嫌な思いから回避…やり直し。
・どちらも学習の強化(心理学でいう学習、行為することで、それが習慣化され、自動的な侵入思考の反応になる)につながる。不快感や嫌な思いを受け入れて、消去の学習をすること。
〇では、嫌なことが浮かんだときはどうするのか。
◎直面する⇒受け入れる⇒浮かんで通る⇒時の流れにまかせる。
※暴露、ありのまま、感情のまま、心をさらしたまま、行動する。あるがままにすること…。
「受け入れ、そのままにする。つまり浮かんで通る」ところが、毎回の修行のようなものです。実践の中で体得するしかありません。
※仕事中であれば、仕事をとにかくやり続ければいい。ただ、ぼーとして、何もしていない時や、テレビなど見ているような受動的な場面で起きた時は、リラクセーションとしての「呼吸法」を数分するとよいでしょう。
丹田式呼吸…へその下を丹田といいます。そこを意識した呼吸法。鼻から息を吸う。口から息をゆっくり吐く。ゆっくり長くは吐くこと(20秒~30秒)が肝心です。人間の呼吸は、「吸うとき」緊張しています。「息を吐くとき」はリラックスしています。ですから、吐くことに重点をおきます。
※受動的な時、観念の侵入も受けやすくなります。そのとき、自然な注意の転換をすることがよいでしょう。「今に集中できることをすることが大事になります。何か目の前に、能動的なもの、集中しやすいものがあるとよいと思います。意識を集中しやすいものとしては、運動する。家事や雑事をする。声を出して歌う。音読する。楽器を演奏するなど。身体の一部を動かし、行為の一つ一つに集中…「今に集中」するとよいでしょう。
呼吸法は、体内に酸素がゆきわたることをイメージし、呼吸に集中すると注意の転換がはかられると思います。
気になったまま、不安のまま進む。五里霧中の中を進む。一つ一つの乗り越えた経験知、積み重ねが「大丈夫」という自信につながり、安心立命の自分をつくっていきます。
◎神経過敏にならないように気をつけましょう。ストレスをためない。無理をしない。自然の生活リズム、規則正しい睡眠リズム、食生活。スマホゲームをし過ぎて、電磁波やブルーライトを浴び過ぎないようにします。
〇自責と反省。反省は事実中心。自責は自分に対する攻撃中心。自責は不安を強め、強迫観念を助長します。失敗には、苦み、嫌な気持ちが伴もないますが、慚愧(自分を恥じること)は次の成長につながるので大事な心理行為ですが、罪悪感(自責)は害になります。反省は事実本位です。自責から反省に切り替えるコツは、反省したら、行動することです。