相談室(ブログ)

職場の人間関係に悩んでいる…辞めるか、それとも続けるか日々葛藤しています

2019.05.24

「入社4年目です。先輩上司に人格を否定するような批判や悪口を言われ、社内にもうわさを流されています。そのため会社内の人から嫌われていると思います。辞めるか、それともこのまま、どんな心持で社内で過ごしたらいいのでしょうか。日々葛藤しています…」(20代女性の質問)

回答

臨床心理シランの室です。

人生は、どんな人と出会い、どのような関係をもつかで大きく変わっていきます。
出会いの中でも避けがたい出会いの第一は、親であり兄弟です。次に学校時代の先生や級友、会社に入っては、上司、先輩同僚などです。また出会いを深め、関係を深めていくものとして、友達関係や恋愛・結婚などがあります。

人は出会いで人生が変わり、良い方向にも進むし、反面悪い方向にも進みます。いわゆる、良縁、悪縁と言われるものです。

仏教に誰人も避けることができない四苦八苦というものがあると説かれています。その中に「怨憎(おんぞう)会苦(えく)」というものがあります。これは、嫌な人、嫌いな人、憎い人と会わなければいけない苦しみという意味です。二千年以上前に説かれた仏教の教えの中に既に「人間関係」の苦しみが説かれています。

現在、人間関係で悩む人は多く、最大のストレス因は人間関係にあるとも言われています。
退職、転職、虐待、DV、いじめ、不登校、ひきこもり、離婚、パワハラ、モラハラなど…人間関係に関する社会問題は増加の傾向にあります。それが因となり心の病になる人も少なくありません。

100年前のゆっくりした社会の中で生きるのと異なり、高度な近代化や科学の進歩が利便性、スピード、グローバル化、自然破壊をもたらし、人間は物質的な豊かさを享受しています。反面失われたものも多くあります。

その第一は、人間の心です。物質的な豊かさと反比例するかのように人間は心がまずしくなっていると言われています。経済優先社会のあおりを受け、会社は利潤追求に奔走し、利益のために自己中心的な人間を増加させています。思いやりが不足しがちになり、余裕のない人間が増えています。結果、早期離職や転職、そして引きこもりを増加させています。

あなたを指導した上司も、そのような社会の中で生み出された一人といえるかもしれません。
あなたに必要な対応はまず事実の正確な把握です。その先輩女性の会社内での行動の事実を正確に把握する必要があります。またあなたの仕事の能力や遂行力の現実把握です。仕事に対しての正当な評価だったのか、感情的な評価であったのか。

配置換えをしてもらったことは、人事部の有りがたい配慮だと思います。ただ、過去のうわさが会社内に広まり、嫌われているのではないかとあなたが思っていること…ここが大事です。事実なのか、あなたの感情的判断なのかです。その見極めをすることが肝心です。
嫌われているという、あなたの主観的判断からものを見れば、すべてがそのように映ってしまいます。まるで色眼鏡でものを見るようなものです。なんとも思っていない人の態度も、冷たく感じたり、よそよそしく見えたりしてしまいます。
あなたが事実本位でものを見ているのか、感情本位でものを見ているのか、自分自身を知ることです。そのためには、自分の客観視が必要です。

会社内に話せる友人がいれば一番いいサポートになると思います。今のあなたには、サポータが必要です。多ければ多いほどよいと思います。会社にカウンセラーがいるのなら、その方に相談されるのもよいでしょう。あるいは民間のカウンセリングルームで相談されるのもよいと思います。
孤立してはいけせん。人間、孤立すると行き詰まってしまいますから。

最後に、何があっても自己評価…自分に生きることです。換言すれば自己肯定感を強めることです。
自己肯定感を高めるには…どんな自分も「自分は自分なのだ」と認め受け入れる自分になることです。他者と比較し劣った部分を自覚したとき、自分を卑下したり、駄目な人間と思ったりしてしまいがちです。また、失敗したとき、自分はダメな無能な人間と責めてしまう傾向があります。
他者に攻撃されたり、批判されたり、嫌われたり、悪口や陰口を言われたりするとき、自分をだめな自分だと思ってしまいます。
こうしたときも、「どんな自分も自分なのだ」と自分を受け入れることができるかどうかです。

「どんな自分も自分である」と受容するためには、自己存在に対する人間観が必要です。「人間はどんな人も平等であり、可能性を秘めた存在であり、かけがえのない個性の持ち主であり成長し行く存在」という信念です。
仮に、今は劣悪な自分であったとしても、それは未成熟な発達途中な自分であり、磨けば輝く存在になると信じて努力できる信念である。

ダイヤは、もともとは黒い石に過ぎませんが、磨きをかけていけば高価な宝石となります。黒の原石を否定すれば輝くダイヤの存在はありません。どちらもダイヤです。ですから、黒い石の自分も「そのまま受け入れる」ことが自己肯定なのです。自己肯定には、「黒石もダイヤも同一の存在であり、黒石も磨けばダイヤになる」という思考の転換と信念に裏打ちされた努力が必要です。その努力の積み重ねが個性を開花させダイヤと自己を高めていくのです。

次に他者を尊敬するかかわりが求められます。
人間はどんな人も平等であり、可能性を秘めた存在であり、かけがえのない個性の持ち主である」という人間観を他者との関りの中で試みることです。
先ほどのダイヤの例に倣って、苦手な人や自分より劣ると思う人に対して、今見えている姿に左右されず、見えない心の部分…「人間はどんな人も平等であり、可能性を秘めた存在であり、かけがえのない個性の持ち主である」という信念で尊重して関わっていくのです。

他者に対しても、自分と同じように人間として尊重していく、差別したりしないでかかわっていくという実践が、他者尊重の心を強めていきます。
つまり自己尊重と他者尊重は同時並行です。鏡に向かって微笑めば微笑みが返ってきます。同様に、相手に優しくすれば、相手から優しくされるようになります。相手を尊重すればやがて相手から尊重されるようになります。

心理学の目指す自己実現の一つの姿は、自分もOKも他者もOKという自他尊重ができるようになることです。つまり自己肯定の確立です。

〇自己肯定感を高める具体的に日々の実行項目。
① 毎朝、鏡に向かって、自分に向かい、微笑みながら、「今日も一日がんばろう」と微笑みかける。
② 一日を終え、鏡に向かって「今日一日、いろいろあったけど、大変だったね。一日、よくがんばったね。今日は、それでいいんだよ。明日頑張ればいい」と今日一日生きてきたことを、労い、そのままの自分を受け入れ、認めてあげる。
※たとえ、嫌なことがあったとしても、失敗があったとしても「今日のことを生かして、明日頑張ろうね」と励ましていく。
 ③ありのままの自分、ありのままの他者を認めるために…価値評価しない。
 決めつけない。「〇〇すべき」「〇〇であるべき」という考え方をしない。
それは、価値観に自他を押し込むことになり、自己肯定感から遠ざかってしまうからです。