マスコミで不登校の増加を騒ぐ前に、大人がしなければいけないことは、時代はいつも大人が中心になって作っていると言うことを自覚することです。不登校・引きこもりの減少を本当に願うなら、今の社会を深く洞察することです。今の社会や学校が子どもの心を成長する場になっているかどうかです。子どもの成長に貢献する教育や学校や社会になっているのか、専門家や政治家は深く賢い知見で、自らの私利私欲を見つめ世相を見極めることです。
不登校児の心理と大人の引きこもり、適応障害などの心の不調者には共通点があります。私たち人間は、環境の中で生を営んでいます。環境と自分は相互に影響し合い、持ちつ持たれつの相互関係で保たれています。私たちが、今どんな環境に生きているのかを知ることで、心の不調を健康にすることができるようになります。不登校の心理は、大人の心の不調者の心理と同じといってもよいと思います。同じ社会環境に生きていれば当然と言えば当然なのですが…。
最近の調査によると、精神疾患者は419万人、ひきこもり者は146万人、不登校者は年々増加し小中で約34万人、小中発達障害8,8%(令和4年文科省調査)。少子化にもかかわらず、若者の精神疾患者は増え、引きこもりは増加、不登校も増加の一途をたどっています。
これは身体の病気も同じです。癌患者は2人に1人であり、認知症は高齢者の4人に1人、アトピー患者、アレルギー患者、糖尿病、各種難病等は年々、増加しています。感染症はウイルスや菌がもたらす一時的な疾病ですが、その他の身体病は、本人の生き方や社会環境と大きな関連があります。
今や、癌やうつなどは生活習慣病などと言われるようになりました。つまり本人の生き方、考え方、行動の仕方が病気を作っといるとする考え方です。
一体、何が原因なのでしょうか。
健全な社会は、心の不調者を出さない予防に力を入れた、健康社会を目指すものです。政治家は、口を開けば「経済、経済」そして「福祉」です。あたかも経済が豊かになり、お金があれば、心の病も解消でき、健康な社会が到来するような口調です。このような政治家や専門家に、疑いを持つこともなく従う国民が、病を増産させている一因と思います。
二つ目の原因は軽薄、表面的なもうけ主義に偏った無責任な情報の氾濫です。そうした情報は何の規制もなく一方的に流布されます。受け取る側が、よほど賢く見極めなければ情報に翻弄されます。情報の真偽が分からず刺激的な情報に踊らされ、洗脳されています。視・聴覚優位な生き方にさせられ、気付かないうちに想像力や思考力は低下していきます。
なかんずく、テレビやスマホは人間の最も弱点ともいえる視覚に訴え、巧みに人間を操作します。人間は視覚情報に本能的に弱く敏感に反応しますから思考が麻痺する部分があります。怖いのは、操作されていることすら感じないことです。情報を受動的に受信することに慣れ、疑うことをやめることは、思考の死につながります。それに気づいていないことが一番の問題なのです。
スマホ・ユーチューブから繰りだされる視覚情報の洪水は、感覚過敏をもたらし、強いストレス源になっていることに気づいていません。それらの氾濫情報は私たちの感覚受容力をはるかに超え、強いストレス状態に置かれていることを私たちは意識できていません。なぜ、すぐイライラするのか、不満になるのか、傷つくのかわかっていません。まさかスマホ・パソコン・テレビなどの過剰な視覚聴覚情報の摂取に原因があるとは思いもよらないと思います。
三つ目は快楽・刹那主義、便利こそ豊かさという欲望の偏向や錯覚です。気持ちよさを求めれば求めるほど、不快に耐えられなくなります。便利さに慣れればなれるほど、不便に対して不満を感じるようになります。便利さが普通になると、この世の自然の現象や生きていることの「有りがたさ」が分からなくなり、心身の秩序を知らず知らずに失い、心の不調の原因を作ることになります。便利さは、当たり前感覚を強め、少しの不便に出会うとイライラしたり、不満を感じたり、怒ったりして、心の状態を悪くしていきます。
便利さや物質的豊かさの過度の追究は、恐ろしいことに自然の加工や破壊をもたらし、病める地球を作り出しています。自然や地球秩序の破壊は、地上に住む生物、人間の心身の秩序の破壊を伴います。なぜなら人間も自然の一部だからです。地球自然との絶妙な調和、秩序の中で人間も、その恩恵を受けて生きているからです。自然や地球や宇宙の恩恵さえ感じない人間の当たり前と思う心が、人間の不幸の源泉かもしれません。
依存心の強さが専門家を信じさせ、確かめることもしない愚かさが、心の不調者を増加させている最大の原因ではないでしょうか。真実に対する無知は不幸の原因です。賢くならなければだまされていることすら気づかず、いつしか不幸に沈むことになります。私たち一人一人が賢くなることこそが重要です。ギリシヤの哲学者ソクラテスの「無知の知…正しいことを何も知っていないということを知りなさい」「汝自身を知れ…本当のあなたの素晴らしさを知れ」という言葉を今こそかみしめるときです。
何も考えず 権威を敬うことは 真実に対する 最大の敵である アインシュタイン博士