相談室(ブログ)

性被害に遭いました。生きることが怖くて仕方ありません。どうしたらいいのでしょうか。20代前半、女性

2020.02.19

(質問)
去年まで大学生で、付き合っていた彼がいたのですが、その彼の友人たちにある日、一人暮らしをしていた家をあとをつけられていたらしく、家に入るときにいきなり2人に襲われました。
抵抗どころか何もできず、言うことを聞くしかなく写真や動画を撮られて数日間言うことを聞くように脅迫されました。
姉に相談し、警察や病院にも行きましたが1年経った今も体も震えは止まらず、もちろん彼とも会わせる顔もなく生きるのが怖くなり、
どうしたらいいのかわかりません。

(回答)
臨床心理シランの室です。
本当に辛い目にお遭いになられましたね。心中お察しいたします。そして一日も早い回復をお祈りします。
以下に、長くなりますが、トラウマ(PTSD)からの回復についてアドバイスさせてもらいます。少し難しい部分もあるかと思いますが…。

全く突然で予測がつかないなどの条件が重なると、誰でもPTSDに罹患するといわれています。すなわち、異常な状況における正常な反応なのです。あなたの今の症状は、正常な反応であることを知ってください。

PTSDの症状としては「再体験」…出来事を思い出したくないのに、繰り返し思い出される「侵入的再体験」があります。
出来事によく似たニュースを見たり、聞いたり、事情徴収をきっかけに、フラッシュバックが生じ、さらに苦痛に苛まれるます。
「回避とまひ」…出来事に関連する話題や場所などを意識的に無意識的に回避しようとします。未来の展望が困難になり、孤独感、鬱的状態が強くなることもあります。
覚醒・不安の亢進…睡眠障害、集中力困難、いらいら攻撃感情、不安感情などの状態が亢進します。再体験をあおられ、回避的感情や行動が奪われると、この症状は激しくなります。

自分に対する厳しい評価や決めつけをしないことです。トラウマからの回復の本質は、自分自身に対するゆるしにあると言われています。
 「コントロール感覚の喪失」という現実に向き合う必要があります。回復のメインは、コントロール感覚の喪失=遭難と向き合うことから始まります。

コントロール感覚を支える基本…自己・他者・世界へのある程度の信頼感です。トラウマを体験すると、この基本的な感覚が失われると言われます。
トラウマ体験は、それまでの日常からの離断の体験、つまり、それまで当然としてあった自己・他者・世界の信頼が失われ、歩んできた人生の道のりから突然突き落とされたような体験ともいえます。それ以前の人生の軌道とのつながりが失われたように感じるようです。

回復目標は、簡単に言えば、新たな役割で、それなりのコントロール感覚をもってやっていけるようになることです。役割の変化、つまりコントロール感覚の回復になります。
役割の変化とは、生活上の変化への適応がうまくいかずに病気につながるときに選ばれる問題領域ですが、トラウマ体験は重要な役割の変化です。

人に話すということは、情動処理の上からも大事です。いつも変わらぬ温かさで接してもらい、無条件の肯定的関心を持つ人と接することです。
その中で、状況が何を意味するのか、感情を通して知っていくことになります。

役割の変化を乗り越えていく、つまり断絶してしまったように見える「人生の道のり」を再び見出すこと。現在地点を知らせてくれるのが感情です。感情を表現し、肯定してもらう作業が大事になります。役割の変化は遭難から抜け出す道標になります。

他人に対する過度の警戒心、対人関係における感情コントロールの困難、怒りの爆発、といった症状を持ちながら、現在の人間関係をこなしていくには、それなりのソーシャルスキルが必要です。現在の人間関係に適応していくことです。結果としてコントロール感覚を増し、病気治療の効果につながります。

自尊心の低下は、ソーシャルサポート(家族、友人、支援者など)によって支えられる部分があります。ソーシャルサポートを増やすことです。
トラウマは、一瞬にして自尊心を破壊する性質をもちます。対人トラウマの本質は、他者に対する信頼の喪失以上に、自分自身に対する信頼の喪失になることがあります。

癒しの根本は自己治癒にあります。
例えば、身体の外傷は本人(自己)の治癒力によって治っていきますが、それは本人が何かをすることによって治っていくものではありません。それを誤解すると、早くかさぶたを取ろうとすると、また出血するようなことになります。自己治癒の自己とは自分の知らない自己であり、自分の知らないうちに作用しているところに特徴があります。これは操作することと対極にあります。
 
心的外傷体験(トラウマ)は、ある意味「瞬間冷凍された体験」のようなものです。冷凍されているが故に、心はその体験を過去のものとすることができず、いつまでも新鮮なままで抱えることになります。いわば「現在に生き続ける過去」として、さまざまな心理的な機能に影響を与え続けています。心的外傷を癒すということは、その凍りついた体験を解凍し、本来の認知的枠組みの中に消化吸収していくことだと考えられます。幸せで快適な出来事は心的外傷の癒し(ケア)に重要な役割を果たします。楽しく、未来が展望できるような、積極的生き方ができるようなできごとを日常生活の中で作ることが大事です。

一日も早く、専門家のトラウマカウンセリングを受けられることをお勧めします。