相談室(ブログ)

自己否定が強いのですが、どうすれば克服できますか

2020.05.05

(回答)

人間は生れたときは自意識がありませんが、自他の区別ができる、いわゆる自意識が芽生えたころから対象との関係の中で、自分という存在の価値を意識していきます。思春期・青年期までは、環境に大きく支配されます。特に周囲の大人、なかんずく親による価値評価に大きな影響を受けます。

人間の価値形成は、人が自分をどう評価するのかという他人評価と自分が自分をどう評価するかという自分内評価によって形成されていきます。他者評価と自分内評価を合わせたのが自己評価になり、その評価が高い人は、自己肯定感が高くなり、自己評価がいつも低い人は、自己否定感が強くなります。

(問い)
自己否定感は、生き方によって作られるものなのでしょうか。

(回答)
その通りです。具体的に説明します。
自己を低く評価する(自己否定)原因について述べます。まず自分内評価についてです。それは自分が掲げる目標設定基準によります。例えば、ある仕事の達成目標を、10に置くとします。
その仕事を7割程度出来たとする。10割でないので意味がないないと考える人にとっては、7割は無価値となります。また6割を目標にする人は、7割はできのよいほうになり、大いに価値があると思えるでしょう。そして満足感、達成感を味わうことができます。逆に前者の場合は、不満足であり、自分をだめな人と見ていくことになります。つまり、目標設定度数によって本人の中での価値評価は変わっていきます。

(問い)
つまり、考え方、物事のとらえ方によって作られると言うことなのですね。その場合、考え方の傾向などがあるのでしょうか。

(回答)
あると思います。前者の考え方・物事のとらえ方として、よく言われるのが、「完璧主義」「白黒思考」「べき思考」「理想が高い」などと言われます。このような背景には、過度な目標設定があります。その原因は、万能感に浸っていたり、あるいは自分の現実が分かっていないなどがあります。また、幼いころの愛着や絶対的な自己信頼としての安全基地の問題、過干渉や過保護などの養育環境があります。

自分内評価のもう一つは、目標の到達、つまり成果以上に、過程(プロセス)を重視する自己評価です。目標に対してもどれだけ努力、工夫したのかというプロセスを評価の対象にします。成果に左右されないので、努力の有無が評価の対象になりますので、次の意欲つながります。この評価こそ、物事や出来事に左右されない自己肯定の源泉になります。

(問い)
納得できるような気がします。ですが、現実の社の中で生きていると、他者の存在や他者との比較や優劣が自己否定感の原因になっているような気もしますが、どうでしょうか。

(回答)
大事な点だと思います。
つまり他者比較、競争、他者との優劣による評価が自己否定感につながるということです。
他者との競争では、他者に劣ると価値がないと考えることがあります。例えば、1番でないと価値がない、2番以下は無価値とする考えです。入学試験で、志望校以外でないとだめだとする見方などです。成功は価値があり、失敗は無価値という考えにつながり、失敗の積み重ねは、やがて自己否定につながっていきます。

さらに周囲の大人や親がそうした評価の仕方をすると、ますます自己否定感は強まり、自己無価値感の強い人間になっていくおそれがあります。
便利社会、経済効率社会の現代社会は失敗の許容度が低く、失敗を許さない成果至上主義の傾向にあります。社会で仕事をする人は、失敗の積み重ねによって、自己否定感…「自分は駄目な人」との思いを強めることになります。この自己否定感、自己存在無価値感が適応障害、うつなどの原因の一因にもなっています。

(問い)
今までの回答からしますと、自己肯定感を高めるには自己内評価が大事ということですね。
絶対評価(自分内評価のプロセスを大事にする生き方)に生きる時、今までよりできた自分、努力した自分、結果も含めて、全ての自分を受け入れるようになれるということですね。結果として自己肯定は高められていくと…。

(回答)
その通りです。自己内評価…プロセスを大事にするという生き方は、対象の相対に左右される自信と違って、何があっても崩れない自分の土台になります。