相談室(ブログ)

感情は 意識対象を 替えることで 一時的な 制御が可能になる

2025.04.01

感情は 意識の対象を 替えることで 制御できるようになる

波のように生まれた感情のエネルギーが、他のエネルギーに転換されてゆくのを待つしか感情の収束は

できません。それは、意識によって対象を替えてゆくということです。意識の転換とはエネルギー

が向かう対象を意識的に替えることになります。例えば、怒ったとき、対象から距離を取ることで、怒

りを緩和させることは、よく知られています。しかし、対象を替えても、エネルギー内容である感情が

すぐに変わるわけではありません。視覚に残像が残るように、五感覚で感受したもの(感情と表現してい

る)の余情や余韻が自然に消えるを待たなければなりません。

マインドフルネスの指向する世界とは

マインドフルネスの意(こころ)は、評価せず今に集中して、目的に向かって生きることと、一応説明

できますが、先ほど述べた、意識対象の転換と同じことを指しているといってよいでしょう。

マインドフルネス的生き方が、注意の転換を可能にし、感情の囚われから脱する一つの道になるのは、

体得にあるからです。それは受容とも 南無(注1)とも表現されています。

このことを体得すれば どんな感情にも 振り回されなくなります。

注1 南無 ナムはサンスクリット語(古代のインド語)で、漢語では帰命と音訳されている仏教の重要な言葉の一つです。南無阿弥陀仏、南無観世音菩薩、南無八幡大菩薩、南無妙法蓮華経など、仏・菩薩や仏性を表現した言葉に冠された大事な文字です。本来は、仏・菩薩や仏性に自分の命を任せ、それに基づいて生きるという意味です。森田療法の創始者、精神科医の森田正馬氏は、自分の命をあるがままに、まかせて、今を生きることを南無というと著書「生の欲望」の中で述べています。

南無を「あるがまま」と同じ意味で使っています。つまりマインドフルネスの指向する世界と同意なのです。どちらも仏教を基盤にしたものだからです。森田療法の核心は「あるがまま」に生きることです。それは体得であり、悟りであると言っています。そうすれば、どんな嫌な感情にも振り回されなくなり、受け入れることができるようになり、苦しみは消えてゆくと言います。彼は、自らの強迫観念や神経症(心臓恐怖症)を治した経験をもとに、森田療法を創作し、当時、難治とされた「神経症」「強迫観念」「神経衰弱・抑うつ」を、薬を使用せず全治させた治療実績(90%以上)があります。

このエビデンスにより、森田療法は日本のみならず、世界に広がり、精神疾患の世界で注目されるようになりました。今、森田療法が下火になっているのは、真の弟子(師匠森田の教えを正しく体得した人)が徐々にいなくなっているからです。どの世界(芸術、宗教、学問、道の世界など)も師匠の精神の体得者がいなくなったとき、衰亡を遂げ、やがて風化し滅亡の道をたどります。これは歴史が語る真実です。