相談室(ブログ)

自然はあらゆる生命(人間)を慈しむ癒しの根源

2022.10.31

空には太陽が正しいリズムにのっとり、地上の生命に光を注いでくれています。また地上の調和された空気(酸素など)も私たちの生命をつないでくれています。海や川の水は私たちに大きな恩恵をもたらしています。山、木々、植物、花、昆虫、魚、動物、大地、農作物など、すべての生命あるものが、絶妙な調和を保って相互に恩恵をもたらしつつ生を保っています。言うまでもなく、人も自然の一部なのです。

これらのことは日常意識されることなく、ごく当たり前のことのように私たちは享受しています。しかし、地震、洪水、気温の異常な上昇、台風や線状降水帯などの頻繁な発生を目の当たりにした時、自然の力に畏敬の念をもったり、当たり前と思っていたことが実は、どれ一つとってもかけがえのない自然の恵みであったことに気づかされます。

便利さの追求が自然を人工化し壊しつつある
科学は日進月歩し、多くの発明が私たちの生活を便利にし、物質的な豊かさをもたらしてきました。その代償の一つが自然の人工化であり、温暖化であり、異常気象と言われています。つまり、便利さや物質的豊かさという明の部分と自然破壊という暗の部分が表裏一体をなしているということです。換言するなら、私たち人間の物質的豊かさを追い求める欲望が自然破壊を加速させているとも言えます。

四季折々(おりおり)の自然の奏(かな)でる美しさ
日本は世界の中でも四季(春夏秋冬)がはっきりした国と言われています。そうした風土の特徴もあって、昔から日本人は自然美を詩歌や絵画や音楽などに表現してきました。平安時代の有名な随筆「枕草子(まくらのそうし)」には、「春はあけぼの 夏は夜 秋は夕暮れ 冬はつとめて…」と四季のもたらす情趣を繊細に詠んでいます。
 秋の夕暮れが醸(かも)し出す美しさは、赤く染まった夕焼け空を背景にして飛ぶ鳥の群れ…それらはどんな絵も敵わない情感を私たちにもたらしてくれます。また夜になると、鈴虫やマツムシの鳴き声に、ともに生きていることを感じさせたります。さらに、夜空には日によって形が変わる月、星空…。澄み切った青空。風にそよぐコスモス、色づいた木々など…。
心を癒(いや)し豊かにしてくれる自然にふれあうことから自然を大事にする心も育ってくるのではないでしょうか。

自然に帰れ…フランスの哲学者ルソーの言葉
「自然は人間を善良、自由、幸福なものとしてつくったが、社会が人間を堕落させ、奴隷とし、悲惨に
した。それゆえ自然に帰らなければならない」また、「人間の内的自然、根源的無垢(むく)を回復すべき
だ」とルソーは言います。これは原始的未開状態への逆行を意味するものではありません。また一切の
悪を社会の罪にして、人間の責任を不問にするものでありません。ルソーはあくまでも社会を人為の所
産(つくりだしたもの)とみて、社会悪の責任を人間に問うたのでした。

地球に生きる私たちは、彼の言葉を深くかみしめることが求められているような気がしてなりません。
自然を私たち同じ生命的存在としてとらえ、共に支え合って生きていくという共生の思想が求められていると思います。