瞋り(瞋恚・しんい)という感情が 最も制御困難な感情
人間の感情で、制御が難しいものが、怒り、恐怖・不安、悲しみ、ゆううつ・落ち込みです。
それらの中でも最も制御困難なものが、怒り(瞋恚、しんいと読む)です。
制御困難であるからこそ、人を地獄まで連れていきます。最悪は、殺人であり、自殺行為です。
波は振幅の大きさと周波数で強度や速度が変ります。瞋恚という瞋りの波は、振幅も大きく周波数も多
いので、自他を巻き込みます。自分や人を巻き込み、他害や自害という不幸のどん底に人を追い込む危
険性を孕んだ感情です。各地の戦争がそれを物語っています。すべて、瞋恚(瞋り・怒り)が原因であり、
それが連鎖し渦巻いています。瞋りの原因と対処としての智慧を獲得しない限り、真の解決も平和も幸
福もありません。
瞋り(怒り)の本態を知ることが 本質的な解決の第一歩
怒りは現代用語表記です。もともとは瞋りと漢語で表記していた仏教の言葉です。瞋りは正確には「瞋
恚・しんい」という心の働きであり、どんな人間にも具わっている煩悩(心の働き)であり、三毒(注1)の一
つです。
瞋恚とは、目を一杯にして対象を叩き攻撃しようとする心の働きです。自分の不利益になることに対し
て、目をいからす「忿」という心作用が起こります。自分にとって不利益になる、思いが通らない、思
い通りにならない、そんなとき、瞋恚の「忿・ふん」の心が湧き起こります。人は、生きるためには、
自分を守らなければなりません。そのためには、敵に対して、逃走か闘争かを、瞬時に判断しなければ
なりません。闘争が瞋りであり、逃走は恐怖の結果です。いずれも生き抜くための本能(煩悩)の防衛反応
であり、行為です。生き抜くための本能であるため、制御が難しくなります。
(注1) 三毒…貪、瞋り、癡の人間の根本煩悩。煩悩とは、人間の心身を煩わし、悩ませる種々の精神作用の総称。根本煩悩(貪り、瞋り、癡、慢心、疑い)五つと隋煩悩20種類に分別している。(成唯識論、世親菩薩作)
瞋りの連鎖のからくり
強くて深い瞋りは、「忿」恨(こん)「悩」「嫉」「害」(注2)と連鎖し、瞋りを増幅させ、簡単にはほど
けない、心的泥沼のもがきを演じます。反芻思考の本質はここにあります。反芻思考の解決は、瞋りの
対処ができれば解決します。
(注2)「忿」は、自分にとって不利益な事柄に対して、忿発し、対象・相手を打ったり、罵ったりといった行為。恨(こん)は、「忿」の後に起こり、怨み(うらみ)を結んで解けないという心作用で、悔しさで熱悩する行為。「悩」は、「忿」と「恨」を追っかけ、懊悩し、他人をカニのはさみでちくちくさすように働きかける行為。「嫉」は、自らの名利を求めて、他の栄えに耐え切れず、妬みうらみ憎む行為。「害」は、他人の生命を損じたり、悩ます行為。