相談室(ブログ)

うつ 心模様1  こだわり・気が済まない気持ちがつくる心の不調和状態

2024.02.07

  何も考えず 権威を敬うことは 真実に対する 最大の敵である   アインシュタイン 
 
 今日まで、うつに対して多くの情報がマスコミ、ネットなどで流布されてきました。今もこの状況は変わっていません。それを受け取る人たちは、何が正しくて、何がまちがいなのかを考えることもせず、ただ権威ある人に従っています。

 うつを大流行させた、うつ病バブル期がありました。それは1990年代のことです。あの有名なキャツチコピー「うつは心の風邪」という、うつ病キャンペーンです。医療の専門家と製薬会社の協同でのマーケティングでしたが、大成功をおさめました。精神科は、患者が来院しやすいように名を「心療内科」とか「心のクリニック」に改め、敷居を低くしていったのです。やがてうつ患者は激増し、それに比例するかのようクリニックや精神科医も激増したのです。30年たった今も、この傾向は続いています。興味ある方は、厚労省の統計調査を見れば事実を知ることができます。
 
 キャンペーンは大当たりで、製薬会社と医療関係者・医師が利益を得る結果となりました。服薬を勧められた患者は、薬づけになったり、薬依存を強めたりして、最も肝心な自力で治すという精神を忘れていきました。結果、うつは必然的に遷延化し、なかなか治らない病気となっていったのです。精神科は苦肉の策として、薬の処方を変えたり、診断名を変えたりして対応してきたようです。
 
 そうした背景もあってクリニックは患者で溢れ、どこの心療内科も予約は3か月待ち状態になりました。しかも診療と言えば、「薬を飲んで調子はどうですか?」「薬を変えましょうか?」「薬を増やしましょうか?」など薬に関することばかりです。

 本来、心を見る専門家の医師が、患者本人の心そのものを見ることをしなくなっています。どこも5分間治療が普通になりました。こんな状態でも患者は真面目に通院します。10年も20年も言われた通りに…。

 当時のキャツチコピーは、「うつ病は脳の病気」「薬を飲めばうつ病は治る」「新型抗うつ薬にはほとんど副作用はない」「それはうつです」などです。古典的うつは「大うつ」と呼ばれ、とても重篤な精神疾患でしたが、このうつキャンペーンで、うつは一般大衆のものとなり、誰でもかかる一過性の風邪のようなものになったのです。心の不調者は風邪をひいた感覚で、心療内科に通うようになりました。

 うつと自殺は強い関連性があり、自殺者の多くにうつ病が見られます。私の大学時代の後輩は、うつで二度の自殺未遂の果てに、最後は自殺しました。40年経過した今も、彼のことは忘れることはできません。大うつの苦しみは、地獄を背負ったような、生きることが苦しくてしかたがないような苦悩を味わい、言葉では表現できないほど苦の状態を招くからです。
 
 自殺との関連性という重大性を思うと「うつが心の風邪」など冗談でも言えることではありません。しかし1990年代には、テレビコマーシャルで流されていたのです。虚言でも何度も宣伝されると真実になり、不幸につながっていきます。ヒトラーの「嘘も100回繰り返せば、本当になる」との言葉は今も真実です。
 
 正しい知識は人を救いますが、誤れる知識は人を地獄に落とします。テレビマスコミ、医療専門家は責任をとることはしません。責任は患者もちです。だからこそ正しい知識が必要なのです。学べば正しい知識を得ることができます。正しい知識による基準があれば、権威に騙されにくくなります。日本は悲しいかな、大人が世界で一番学ばない国になっています(女性は世界2位)。

 病める人は、藁をもすがる思いで、厚生労働省の発信情報とか著名人、有名人や権威ある専門家の人たちの言葉を信じて、言われた通り精神科に通い、処方された抗うつ薬や抗不安薬を服用してきました。

  ネットにはうつのチェックリストが今も載っています。そのチェックリストの根拠や科学性など吟味することもなく、人々は、やみくもにそれを盲信して自分をチェックします。まるで占い判断をするように…。「自分は何個当てはまる」とかで「自分はうつだ」「自分は○○障害だ」とか自己診断し、自分に暗示をかけていきます。暗示は催眠と同じ働きをし、本当に○○障害のようになっていきます。人は自らの言葉の暗示で気分を作り出すという心の不思議さを持っているからです。

 その自己暗示にかかり、暗示にマインドコントロールされた人たちは、治療のため心療内科に行きます。これはうつだけでなく、発達障害や○○障害のチェックリストでも同様なことが起きています。日本人は権威や集団圧に弱く、権威者の言いなりになりやすく、暗示にかかりやすい民族なのです。

 うつは脳の神経伝達物質、セロトニンの不足という仮説(モノアミン仮説ともいう)をもとに、抗うつ薬が処方されます。しかしあくまで仮説なのです。科学的実証性は乏しく、それは偽薬と抗うつ薬の服薬実験で効果はどちらも半々であったというプラセボ実験で証明されました。

 脳とうつの関係、うつと神経伝達物質の関係はまだ不明確のままなのです。うつとホルモンの関係、うつと身体全体の関係について正しい知識を持つことにより、うつは改善していきます。うつは心身の全体の不調和がもたらす一時的現象です。最近、うつも生活習慣病として見立てられるようになりました。これは正しいと知見だと私は思います。
 
 西洋科学は部分の分析知には長けています。しかし人間の身体、なかんずく心は部分の分析では解明できません。意識は広大な心の世界の一表現にしか過ぎません。現在の精神科の症状診断はDSMという操作的診断…簡単にいえば患者の訴える症状をもとに判断するという医師の主観性に委ねられたものになっています。つまり患者がその時に意識している世界という心の一部分をもとにしたものなのです。 

 「木を見ても森を見ず」 
 これは部分観に陥りやすい人間の傾向を指摘した名言です。部分を知って全体を知らないという偏った知識が、心の病では一番危険なことなのです。意識はあくまでも心の一部に過ぎません。その意識を支える心全体、命の働き全体を知ることなしに、本当の意味での心の病の解決はないのです。

銀河の旅人