相談室(ブログ)

高校一年生の息子が不登校になり毎日家にいます(40代女性)

2019.06.16

質問

高校一年生の息子のことでご相談です。
GW明け前から、学校へ行けなくなり現在も不登校で毎日家におります。
本を読んだり、ネットで調べたらしていると、心が疲れているだろうから「学校へ行け行け」言うのは本人が辛いから言わないよにとあるので、気をつけ、本人とも何を悩んでいるのか等話もします。ですが、学校へは行けません。将来の目標もありません。
息子の悩みは、人との距離感がわからない等対人的な悩みが多いです。肯定しつつ、アドバイスしつつしてますがなかなか先に進みません。
朝も起きてこず、何時に起きてるのか…私が仕事から帰ってくると昼寝してたり、布団に横になってたり。最近は風呂にも入っておりません。食べたものもシンクにテーブルにほったらかし。無気力に見え、ダラダラしているようにしか見えません。気分は、良い時は悩みを打ち明け話したりしますが、落ちると無反応、目つきが変わるという感じです。最近は大人になりたくないと言っています。急にすり寄ってくることもあります。母親父親ともに寄ってきます。わからない行動ばかりです。
明るく盛り上げてみるものの、効果はなく(効果ないのはわかっていますが)今は、親が参ってしまっている状態です。

このような息子にはどのような支援が必要なのでしょうか?根本的な問題を解決し生きる希望を持たせるにはどうしたらよいでしょうか?思春期外来の予約をしてますが、まだ先です。学校のカウセラーも一度は行きますが続きません。全寮制の自立支援センターも考えはじめています。過去、相談した病院、施設では甘えと言われました。
ただただ時間ばかり過ぎて行くのが虚しく、誰かにすがりたい気持ちでいっぱいです。
アドバイスお願いします。

回答
臨床心理シランの室です。

豊かさを生きることは容易なことではありません。不登校の子どもは概して真面目です。
学校や親の評価は高いかもしれませんが、友達と合わなくなり、社会からずれていきがちになります。
結果、不登校になります。不登校の子どもは学校から離れることによって、役に立たない生き方からの脱却を図っているのです。

豊かさを生きるには、不透明な状況を探索的に進む力と質のいいセンスが必要です。
不登校は見た目とは違って、自分と付きあっている時間という意味では貴重な時間と考えられます。

不登校は現象的には自分のわがままを優先して、周囲の要請から外れているように見えますが、実際は全く逆で、周囲の期待を生き過ぎた結果、エネルギーが枯渇した状態なのです。

私たちが身近に付き合っている他人は自分自身です。しかも結構付き合いにくい相手です。感情も身体も自分の一部でありながら、自分の思い通りにならない存在です。自分とうまく付き合えるとき、人は満足を感じたり充実を覚えたりするものです。

不登校の子ども中には他人とうまく折れ合えない子がいます。人間関係は、ごく普通にやっているように見えますが、数学の問題を解くよりはるかに複雑な計算や判断を瞬時にしなくてはならない難しい作業なのです。これらの力は、何より「自分という付き合いにくい他人との関係で培われるものです。

退屈は創造の母です。退屈を通して自分が何を求めているかに気づくのです。何もすることがない子どもを見ていることは辛いものです。しかし時間を持て余しているように見えても、心の深い部分では、創造の泉を求めて井戸掘りの作業が進展しているのです。必ず掘り当てられるという確証のない孤独で不安な作業です。大人が踏み固めて硬くなっているからです。親は、不登校のこうした心を理解した対応が求められます。
支援者によるカウンセリングは、今までないがしろにされてきた自分との付き合い方を手伝う時間でもあるのです。

支援者(カウンセラー・医師など)の選び方は、本人との相性、本人に適切かどうかを重視するべきです。そのためには、まず母親が、その専門家とあって、どんな人、どんな雰囲気のところかを知り、本人に合うかどうかを判断することです。有名とか専門とかで判断して、治療者不信になれば、改善がますます困難になるからです。(当室来談のなかで、有名とか専門とかでいきなり子どもを連れて行って失敗…不信感を強め、悪化したケースがたくさんあるからです)

親は、子どもに対して、無条件の肯定的関心をもつことが大事です。子どもをありのままに受け入れることです。評価せず、存在そのものを無条件で受け入れることです。忍耐強く、子どもの将来の変化(よくなっていこうという心)を信じ抜くことです。

思春期は、今までの自分を今一度点検する時でもあり、積み残した発達課題(未成熟部分)があれば、思春期を乗り越えるのに人一倍苦労するかもしれません

親も二度目の子育てを求められる時期であり、子ども同様成長していかなければなりません。多くの子どもは「危機」の時期を問題なく乗り越え自立していきます。彼らを身近で支えているのが、親をはじめとした家族であり、祖父母であり、兄弟であり、友達であり、先生たちです。だれか一人、信頼でき本人を受け止めてくれる人がいれば、思春期を乗り越えるべき山として立派に乗り越えていきます。

今は父親(父性)が求められる時です。表面的な行動の奥には別の心…「よくなっていこう、成長しようという善性」が心の中に存在しています。そこを信じて、こどもの表面の行動に振り回されず丸ごと受容し忍耐強くかかわれるかが鍵になります。その前提の上で、父親として社会化(自立)をサポートしなければなりません。

今の息子さんの行動には意味があります。その意味を両親がしっかりと理解し、手を放しても目を離さない、こどもの「よくなりたいという善性」を信じぬく関わりをしていけば、徐々に良い方向にかわっていくと思います。時間はかかるかもしれませんが、長い目で見て諦めず関わり続けてください。必ず自立する日がくるでしょう。