相談室(ブログ)

死ぬ勇気はないけど死にたい気持ちで一杯です

2019.05.27

質問 「最近人生に絶望するようなことがあり、先日カウンセリングに行ってきました。しかし、カウンセリングの先生はあまり話を聞いてくれず、こちらの話をさえぎって否定するようなことを言われたりして、自分は生きていることが迷惑なのではないかと思いました。
これまでお世話になった親に迷惑をかけてしまい、申し訳ない気持ちで一杯で潰れそうです。自分でも自分のことがよくわからなくなります…」(趣旨・20代女性)

回答   
臨床心理シランの室です。

絶望し死にたい気持ちになるどの失敗…あなたにとって致命的なものだったと推測します。失敗にともなう感情…周囲の無言の評価、また自分が自分を評価してしまい、自己否定感が強くなり、自分はだめな人間だと思いがちになります。結果、自責の念は強まり、悲しく、悔しく、辛く、苦しく、自分が愚かだという思いに苦しむことになります。消えてしまいたい、死にたい、そんな気持ちにもなるでしょう。

まして両親が経済的にも応援してくれていたのなら、その期待を裏切ったような感じにもなるでしょう。受けた恩に報いることができなかった…。

あなたの失敗は、「恩を仇で返す」ということではありません。仇で返すというのは、受けた恩を忘れ、報いることもせず、逆に両親に対して、非人間的な行動をしたり、敵対したり、攻撃したり、お金や財産を盗んだりするような行為に及んだときのことです。あなたは、単に恩に報いていないだけのことです。失敗と報恩は無関係です。

あなたが生きている限り、恩に報いるチャンスはいくらでも巡ってきます。親も「これから頑張れば大丈夫」と言ってくれているように、今後のあなたを信じ期待しています。

人間はだれでも失敗するものです。失敗の大小はあると思いますが、どんな失敗も必ず、取り返すことができます。人間は、いくつになっても可塑性(粘土のように練って形を作り直すこと)に富んだ存在だからです。

本当の失敗は、失敗から立ち直らないことだと言われています。
もし、恩を仇で返すとすれば、それは、あなたが、今回の失敗から立ち直らないことでしょう。立ち直ることが償いにつながると思います。

「時間がそれを軽減し、和らげてくれないような悲しみは一つもない(キケロ)
「私にとって失敗こそ最良の教師である」(フォークナー・フランスの作家)

両親が支え、応援してくれたから期待に応えなければいけない、受けた恩に応えなければ、人間としてはだめなのだという。あなたは、生真面目すぎるほど責任感のある人のように思えます。

周囲の人はあなたが思っているほど、あなたの失敗に対して、あなたの評価や価値を変えたり、下げたりはしていなし、期待を裏切ったなどとも思っていません。それはあなたの全体を客観的に捉えているからです。

私的なことで恐縮ですが、私は大学受験では3年間浪人し11連続不合格。まだ若かったので、悲哀や自責の念が強く、長い間、憂鬱感情に沈んだりしていました。大学卒業後は教師となり、生徒や保護者の役に立ち、支えてくれた人に恩返しができたと思っています。

「成功=人間として価値があり、認められる」「失敗=人間として価値がない、自分が否定された」というように価値は二極しかないのでしょうか…。その思考は、二極思考になっており、「0か100か、オールかナッシングか」になっています。

0と100の間にはたくさんの数字があります。つまりたくさんの考え方があり、選択があり、判断があり、行動があり、可能性があります。白と黒の間にもたくさんの色があります。

人生、柔軟な思考になれば、いろいろな考えができ、人生の幅も広がり面白くなります。がんじがらめに、一つの価値観にとらわれると窮屈になり、かえって息が詰まるでしょう。ちょと立ち止まって見方を変えてみませんか。違う生き方、人生が見えてくるはずです。

「人生塞翁(さいおう)が馬」です。失敗が次の成功につながる。失敗した時に、その苦さ辛さの中で自分を見つめ、いろんなことが学べるからです。

地球上の生命体の中で、人間生命だけが、自らの意志と決意で自分を高めて、自らを変えていけるという可能性を秘めた存在です。人間生命そのものに、私たちの考えが及ばない無限の可能性が内包されているからです。だからこそ生きるということに絶対的な至高の価値があると言われているのです

今は、失敗で傷ついた心を、疲れた心をゆっくり癒してください。

五感を使って心を癒してみるのもよいと思います。
目…心を癒すものを見る。朝焼け、夕焼け、海、空、花、自然、山、川、動物、植物、絵など…
耳…癒される音楽、鳥の鳴き声、せせらぎ、好きなラジオなど
舌…好きな食べ物、コーヒーや紅茶、ハーブティー、など
鼻…いい匂い、アロマ、香水、花の匂いなど
身体(触)…化粧、ネイル、ファッション、髪型、散歩、買い物、運動、複式呼吸、マッサージ、温泉、入浴など
意識…読書、友達との楽しい会話、日記を書くなど
思いついた癒しを列挙しました。あなたにあった「心休まる、癒し」を探し、試みるとよいでしょう。

癒しが終われば、新たな出発ができると思います。