相談室(ブログ)

恩を知り恩に報いる心は美しい人間性のあらわれ。

2023.12.01

 自然の恵みを感性豊かに識(し)る生きものこそ、賢き生き物であり、人という教えがあります。

 恩を知るのが人であり、恩を知らないものは動物以下であるとも言っています。確かに動物も恩を知り、親から受けた恩に報いています。
 
 中国の歴史、三国時代を描いた「三国志」は多くの人に愛読された文学作品になっています。漫画やアニメ、テレビでも放映され、有名な登場人物、諸葛公明、玄徳、関羽、曹操、呂布などはゲームにも登場しています。私も若き日に、吉川栄治の『三国志」(8巻)を読み、多くを学びました。以来その文学に魅了され、今日まで、4回以上読んでいます。
 
 文学ですから、史実が脚色され、美化されている面はありますが、三国志には様々な人間模様や人間の生きざま、人間の欲望や理想や正義や人倫や思想が描かれていて、人間を知る上での教科書的読み物になっています。自らの名誉や名声や強欲や利欲に走り、恩を忘れ、滅びていく人が多く描かれています。
 なぜ、欲に負けてしまうのかも描写されています。逆に人間の道の正しい生き方、義と恩を知り、命をかけて恩に報いる義の人生も描かれています。特に玄徳・関羽・張飛が青年時代に誓った「桃園の誓い」を生涯貫いた「義」の人生、諸葛公明や関羽の恩愛と報恩の生き方は、人間の最も崇高さの表れであり、人間の美しさでもあります。その心が三国史の中でも最も美しい一幕であり涙なくして読めないロマンあふれる感動的場面になっています。人間の心の善悪、美醜が描かれた名作と言えるでしょう。
 
 私たち人は、地球の恩恵、大自然の恩恵、太陽の恩恵に対してどのくらい恩を感じているのでしょうか?恩を感じないほど、心が欲望で濁っているのでしょうか。それとも意識が汚れているのでしょうか。世間の汚濁に染まった人間の心が、戦争を起こし、犯罪を起こし、人を傷つけ、自分だけ栄えようとし、大恩ある地球すら破壊しようとしています。傲慢(ごうまん)、癡(おろか)、限度を超えたあくなき欲のなせることでしょうか。
 
 完全に人間の心が欲望にマインドコントロールされた状態になっているようです。マインドコントロールは何も宗教だけの専売特許ではありません。人間が自らの欲や恐怖や安楽や偏った思想に支配され自ら正しい意識、正しい思想を失った状態を指しているのです。

 恩を知る磨かれた感性、そして恩に報いて生きる清らか心、そこに地球や太陽や自然を貫く慈悲と創造的な無限の生命の働きが共鳴し波長が合い、心は躍動し喜びを覚えるのです。フランスの哲学者ベルグソンの「生命の躍動・生の創造」の別表現でもあると思います。これが心の宝なのです。
 その人こそ人らしい人といえるのではないでしょうか。 文責 松岡敏勝