喜び、安心、躍動、智慧にあふれた生き生きとした健康のリズムが、人の心の奥に流れていると、ブッタは弟子たちに語りました。
スティーブジョブ氏 最後の言葉
一代で巨万の富を築き世界的名声を得た、アップル創業者のスティーブジョブ氏は、すい臓がんのため55歳でこの世を去りました。死の直前、病床で語ったこと…「富や名声は死に際して何の役にも立たない。いのちが大事だ、私の病気と替わってくれる人は、だれもいない。私は、まだ大事な書を読んでいない。それは、健康に生きるための本だ」
自然、生物、人、万物は リズムを奏でている
塵、花、木、川、海、山、生物、人間、地球、月、太陽、星々、銀河のすべてはリズムを奏でています。これは、量子物理学の発見であり、生命の不思議世界に接近しつつあると言われています。見えない心のリズムについては既に、2600年前にインドの釈尊・ブッタ(注1)によって直観知され、その真意を信解した正師たち(注2)に求道、研鑽され、発展を遂げてきました。
宇宙のあらゆる存在は周波数でかたちが決まり、それぞれが固有の振動を奏でています。天に昇るような喜びの振動もあれば、地の底に沈むようなリズムもあります。動物も生物も、そのかたちに応じた振動をしています。人は通常は平穏・平和なリズムを奏でています。それが人間のリズムの基本であるとブッタは言います。
人は 他の生命や自然のリズムに 振動・共鳴してしまう
生命の発するリズムは光の波のように四方八方の周囲に拡散されます。よい光や香りを放つ人もいれば、怒気や不愉快波を出す人や臭気を放つ人さえいます。目に見えない波ですが、周囲に広がります。いわゆる共鳴現象です。五感で感じられる共鳴と、感じられないものがあります。例えば、お腹の中の赤ちゃんが、母親の言葉を聞き、感情を受信しているようなものです。善も悪も共感・感染します。きれいな夕焼け空や朝焼けの振動、穏やかな言葉の持つリズム、癒される自然の波動、心惹かれるリズム、嫌な不協和音の攪乱波(かくらんは)など、すべての生命的存在は、心の境界(注3)に応じたリズムを奏でているとブッタは語りました。
生理的合わないの本当の意味
「あの人とは、生理的に合わない」は、その一つの例であり、その人の発するリズムを心身が受け入れられない反応です。しかし、それは固定化されたものではなく、こちらの心の境界が上がれば、生理的な回避反応も、受け入れられるようになり、その人に合わせることができるようになります。
自らの心の境界を高めることで、どんな人の波長にも適応できるようになる
また不登校・ひきこもる人の中には、人々の発する不愉快な波を避けるために安全空間に回避している人も少なくありません。他者や社会の持つ嫌な波を受け入れ、適応できるようになるためには、こちらの心の境界を高めるしかありません。心の境界が低いと周囲に振り回されますが、高くなると、逆に周囲・環境をリードすることができ、価値的に対処できるようなります。
善き人、善き言葉に触れると 善いリズムに目覚め 人格が高められていく
ブッタのような人格の香る人のそばにいると 共感現象により 心が浄化され、人間性の高みに引き上げられていきます。逆に朱に交われば赤くなるとのことわざのように、人間性の低い人のそばにいると、「類は類を呼ぶ」ように、そのリズムに感染し いつしか人格から悪臭を発するようになるかもしれません。人はその境界に即して振動し、波を出しているからです。人の心がわかることは大変な難事です。自分の心がわかっていないと、人の心も分からないからです。多くの人は本心を隠して生きています。心が澄んだ人は、他者のリズムを直感で感じとり、その人の本質を知ることができ、善き波動と悪しき波動の持ち主を見わけることができるようになります。人を見分ける基準は、その人の私欲私心(松下幸之助の言葉…私欲私心が会社をつぶす)の有無をみればわかります。人格者は清廉潔白であり、正義を行うことに正直な人です。
意識は光のようなものであり 粒子と波の二面性をもつと考えられる
意識とは何か、最新の脳科学も、またあらゆる科学をもってしても、意識を正確にとらえることはできていません。しかし、確実に言えることは、今、このように読んだりしていることは意識の働きよるということです。その働きは、脳内の細胞・ニューロン間の電子伝達によるものであり、電気信号によって、シナプスに記憶化された言葉(物質化されたもの)を蘇らせている作業です。しかしそれは、意識の一面的説明に過ぎません。
意識は言葉では説明できない世界のリズムです。比喩的に説明するなら、光に譬えるしかありません。細胞が微弱な光(バイオフォトン)を出していることが、最近明らかになりました。光は二つの側面を持っています。それは粒子と波という二面性です。人の意識は、言葉による思考や想像力と気分・情緒という二側面があると考えられます。言葉・イメージは固定化された物質であり粒子(質量は0です)と言えます。気分情緒は波に譬えられます。人間の意識は情緒・気分というリズムをもっていると推測でき、それは波のようなものであり、関係性によって起きるため、不確定性原理が示すように把握できないのです。
生命は関係性であり 生滅の変化を奏でている
量子力学などで、素粒子の世界や動きから周波数の一部は解析できている部分もありますが、ごく一部であり、ほとんどが闇の中です。あらゆる生物、物体、人間や動物も固有の周波数を出していますが、固定的なものではなく、絶えず変化し、相関性で生起しているのが真相です。関係性で生起しているゆえに、一方が変化すれば他方も変化することになり、固定化できず、観測も分析もできないのです(不確定性原理)。その意味では素粒子の究極の世界と意識・生命は似ているといえます。宇宙のすべての生命体は周波数によってかたちができ、その周波数も刻々と変化し生滅を繰り返し、相関性(縁起)で成り立っていると直感したのが釈尊です。
健康・幸福になるリズムは 意識を磨くことから始まる
波動を高めるとか運気をあげるとか、周波数を合わせるとかいっても、宇宙、生命の真相がわからないと、どこに周波数を合わせるかさえわかりません。指標なき盲目の方向は危険です。地獄行きの周波数や人をだまし(グルーミングなどの優しい言動など)、不幸を誘う周波数で満ちているのがこの世界の現実です。心が濁っていると、見る目が曇り、真実が見抜けなくなり、偽物を本物と見てしまいます。結果、不幸な人生をさまようことになります。思考を磨き、選択する力、判断力を高め、想像力を広げる意識の錬磨によって健康・幸福のリズムに乗ることができるようになります。
真実を悟っていない人の言動や振る舞いを見ぬく賢さが求められる
見えないリズムをあつかう、宗教やスピリチュアル系や思想・考え方の怖さはそこにあります。今、問題になっている宗教がそのよい例です。そもそもお金や営利の心がある人や団体には気を付けなくてはいけません。ユーチューブやサイトの情報は要注意です。そもそも閲覧数(利益・名誉になる)が目的であり、閲覧者の幸福などほとんど考えていません。正しい思想の人は、ブッタやその弟子たちのように、お金や名声名誉を求めず真実の探求を第一に誠実に生き、自他の救済に生きています。なぜなら真実の探求と悟りで心が喜びと充実感に満ちおり、既に心の宝を得ているからです。
生命の真実に最も近づいとされるブッタ
生命本来のリズムの解明は宇宙すべての生命現象の解明なくしては分からない難問です。生命の真相を求めて、この地球では有史以来あらゆる聖人、賢人、物理学者、数学者、哲学者、思想家、宗教家が格闘してきました。そして到達した世界を書物や対話などで残してきました。その数は膨大であり、一生かけても探究できないと言われています。最も生命の真実に迫った人たちは2600年前ぐらいのインドに端を発しているようです。自分のすべてをかけて生命の真実に迫ろうとしました。世俗の欲と闘い、迷いの生命と格闘し悟りを得たと言われています。その代表が釈尊・ブッタと言われています。
生命の悟りは知識・言葉・分析知では到達できない 修業実践の中に脈打つ直観智
生命を悟ることは、知的理解では到達できないと言われています。知識は生命の一部しか理解できません。ブッタの悟りは直観智であり、生命全体で識ることでした。それは心身全体をかけた実践・修行のなかで生命浄化の果てに到達できた生命の直観知です。
欲望に染まった生命を浄化することによって、本来の純粋な自己が発するリズムにはじめて冥合が可能になります。本来の自己、つまり宇宙本来の自己のリズムは、万物を創造し育み慈しむ慈悲の音律であり波であり光であり無分別の一法なのです。慈悲の修行実践者にして初めて到達できる悟りです。欧米世界やイスラム世界では、その存在を神と命名し、人間世界のはるかかなたに祭り上げてしまい、その存在の探求や思考をやめ、崇め信じることを第一義にしてしまいました。
最高のリズムに合わせて生きるためには、覚者の通った道に学び、覚者の言葉を師標(注4)にして修行実践するしかありません。言葉では表現できない不可思議な音律がもたらリズムは覚知であり実践修得しかないからです。
正しい知識・言葉は 詩的で 美しい響きを持っている
そのためには、正しい指標、正しい知識が必要になります。正しい知識とは、生命全体を基本にした上で、部分は部分として把握理解している知識です。逆に不幸を誘う知識は、部分をもって生命全体とする偏った知識です。実践行動してみて、100%の人が幸福を実感できるものこそ正しい知識の証といえます。正しい言葉は詩的で美しい響きがあります。以下は、私が読んだもので美しい響きを持つものと記憶しているものの一部です。
「論語」、万葉集などの短歌、平家物語の冒頭、ニーチェの「ツラツゥストラはかく語りき」、マルクスの「ヘーゲル法哲学批判」、ゲーテの「ファースト」、ペスタロッチ「隠者(いんじゃ)の夕暮れ」、日蓮の「立正安国論」、ベルグソンの「創造的進化」、西田幾多郎の「善の研究」、宮沢賢治の「雨にも負けず…」や高村光太郎やタゴールやホイットマンの韻文、偉人の名言、故事成語など…。
善き知識 善き書物、善き人 善き師、よき先生に出会えることこそ 人生最高の宝であり、智慧と福徳の源泉です。それらの存在が契機(縁)となって私たちの心の境界を高め、幸福リズムに導いてくれるからです。
(注1) ブッタ…一般的には2600年前頃にインドに生れ、生命の真理を悟った人を言う。釈迦族(しゃか)の王子であったことから、釈尊と敬称されるようになる。釈尊50年の教法は八万宝蔵(はちまんほうぞう)と言われ、日本では般若心経や法華経や禅(ヨガや森田療法やマインドフルネスに影響)が、わずかに知られている。ブッタは釈尊一人の呼称ではなく、生命の真実を悟った覚者の別名であり、宇宙には無数の覚者が存在し、仏は人的側面を指し、法的側面は仏性(ぶっしょう)と言う。その仏性が心の本来のリスムであるとブッタは悟達された。
(注2) 釈迦滅後1000年の間に、釈迦の教法(法蔵)を付属し布教した24人の正師のこと。釈尊10大弟子の一人、迦葉尊者(かしょうそんじゃ)に始まり、14代目に竜樹菩薩(りゅうじゅぼさつ・ナーガールジュナ)がいる。「空・くう」「縁起・えんぎ」などの深遠な生命理論が展開され、その「関係性の理論」は、量子力学の発見と近似していると言われている。
(注3) 心の境界 …中国の天台大師(538年~597年)によると、天台は心を多面的に観念思惟し、釈尊の法華経の中に秘されていた「一念三千論」の生命論を体系化した。心の十境界・じっきょうかい(1地獄界「苦しみ」、2餓鬼界(がき)『貪り・執着する心」、3畜生界(ちくしょう)「癡、おろか・威張る・愧(はじ)ない心」、4修羅界・しゅら「傲慢・嫉妬・マウントする心」、5人界・にん『平穏・おもいやりる心」、6天界「満足・喜び」…この六つの境界は環境に左右されやすい。7声聞界・しょうもん(正しい知識を学び自分のものにする向学の心、向上する心)、8縁覚界・えんかく(見えない世界や法則を悟る、気付き)、9菩薩界・ぼさつ(自他ともの生命を高め慈しむ智慧の振る舞い)、10仏界・ぶっかい(ブッタ、覚者、生命の真実を悟り成りきる)…以上の四つの境界は環境・他者を価値的にリードすることができる)。天台の境界論は、のちの仏教界に大きな影響を与えた。すべての命(衆生)は十界を有し、それらは「空」の状態で存在し、縁によって生起するという関係性理論を展開し、心の境界は固定化されたものではなく、意識を磨き修行することで高め、変えることができると論じた。現在の量子力学は、その理論を証明しつつあると言われている。
(注4)釈尊が弟子たちに説いた最も大事な指標の一つに「六波羅蜜」(ろくはらみつ‥波羅蜜とは、迷いから悟りに至り、宇宙大の生命をくみとり、そのリズムに乗るための六つ項目) の修行実践がある。六波羅蜜を正しく実践すれば、あらゆる病は治るとされている。釈尊は医王との別名があり、治せない病気はなかったと言われている。
1,「布施波羅蜜(ふせはらみつ)」…この実践により、自己の慳貪・けんどん心(貪欲で人にものを与えず独り占めする心)を破すことができる。具体的な実践として、財施・ざいせ(財・お金を他者に施す)、法施・ほうせ(正しい生き方や知識を人に施す)、無畏施・むいせ(心からの安心感を人に与え、人々の恐怖を取り除く)がある。これを実践すれば、執着を明らかに見ることができるようになり、依存症(ギャンブル依存など)を治すことができるようになる。心の境界の「餓鬼界」を善の方向に転換できるようになる。
2,持戒波羅蜜(じかいはらみつ)‥悪を止め、善を行うこと。リズム的生命活動を破る行為を、再び人間らしい生命へ回復させる実践。これを実践すれば、反社会的行為を治すことができる。心の境界の畜生界を善の方向に転換できるようになる。
3,忍辱波羅蜜(にんにくはらみつ)‥忍耐のこと。瞋恚(しんい、各種の怒りの煩悩を破す効果がある。)他者の生命を高め、慈しむ菩薩行には、耐え忍んで他者を守るという努力が要請される。これを実践すれば、アンガーをマネジメントすることができるようになる。心の境界の地獄界を善の方向に転換できるようになる。
4,精進波羅蜜(しょうじはらみつ)‥喜んで慈悲を行い、いささかも怠けない。懈怠(人間完成に向かって努力することを怠る心)を破す。これを実践すれば、社会で、その道の一流になることができる。修羅界を善の方向に活かすことができるわうになる。
5,禅定波羅蜜(ぜんじょはらみつ)‥静慮ともいい、精神を集中して散乱せしめないこと。マインドフルネスは、これを重点的に実践している。これを実践すれば、不安障害など多くの心の病を治すことができる。人間界を強化し安心立命の心を得ることができるようになる。
6,般若波羅蜜(はんにゃはらみつ・般若とは、智慧の意味)一切の事柄、法理に通達して明瞭ならしめる智慧の獲得を目指す。愚痴・ぐち(物事の道理に暗く、因果律や善悪、正義がわからない心)を破す。これを実践すれば、崩れない幸福郷に至ることができる。六波羅蜜のほかに、大事な指標として「八正道・八賢聖道」があるが、ここでは割愛する。
◎当室はあらゆる思想・宗教団体と無関係です。室長は若き日から、ソクラテスをはじめとする哲学、フロイト・ユング・ロジャーズなどの心理学理論、森田療法、マインドフルネス、マルクス理論、キリスト教、仏教、天文物理学、日本人行動様式論、音楽論、世界文学、西洋文学、東洋文学、日本文学、老荘思想、孔子の儒教、人体学、脳科学、心理行動理論、詩音律学などを研鑽してきました。今は、人体学、意識論、量子力学、ニコラ・テスラの哲学、ブッタの教え、唯識・天台の生命論を中心に思索研鑽するなど、学問の旅は続いています。
人間性薫る 芝蘭の便り 2025,6,14
◎当室はあらゆる思想・宗教団体と無関係です。室長は若き日から、ソクラテスをはじめとする哲学、フロイト・ユング・ロジャーズなどの心理学理論、森田療法、マインドフルネス、マルクス理論、キリスト教、仏教、天文物理学、日本人行動様式論、音楽論、世界文学、西洋文学、東洋文学、日本文学、老荘思想、孔子の儒教、人体学、脳科学、心理行動理論、詩音律学などを研鑽してきました。今は、人体学、意識論、量子力学、ニコラ・テスラの哲学、ブッタの教え、唯識・天台の生命論を中心に思索研鑽するなど、学問の旅は続いています。