相談室(ブログ)

想像力を遣(つか)い 全体とつながる身体瞑想で 心身が健康になってゆく 

2025.12.05

「大事なのは、まだ誰も見ていないものを見ることではなく、誰もが見ていることについて、誰も考えたことのないことを考えることだ」(シュレディンガー、20世紀の物理学者、波動力学を提唱、ノーベル物理学賞受賞)   

生きている、それは今の意識が対象に対して感じる世界のことです。心地(ここち)よい、苦しい、何も感じないなど対象に応じて変わる感覚です。そもそも意識とは、一体何でしょうか。現代科学でも、解明できない謎の一つです。はっきりしていることは、私たちの意識は、脳の働きと関連して起きる現象ということです。だからといって脳から意識が生まれるのではなく、脳を経由して働く、分析できない存在です。意識は物質ではなく振動という流れだからです。

意識は心の働きの一部ですが、心全体ではありません。また意識は対象の一部しか感知できないという限界を背負っています。また頭が痛い、おなかが痛い、憂鬱(ゆううつ)だなど、心身の一部の痛みや苦しみというメッセージを受け取っているのが意識です。意識は、私たちの心身全体を感知できません。つまり意識=自分ではないということです。体の司令塔(しれいとう)が脳だとすれば、私たちの心身全体のリーダー的な働きをしているのが意識です。意識によって行動の方向性が決められているからです。

(たと)えば、痛みを受信した意識は、痛みを除去しようと、ある場合は活動を()めて休み、またある場合は病院などに行って手当をして痛みを取り除くという行動を指示します。また、おいしい食べ物など、心地よい感覚をもたらすものに対しては、接近し、その行動を繰り返したりします。すべて意識が決める方向性です。意識の働きの一つは感知した世界に対して、その感覚を鮮明にし、言葉やイメージ化を図り、方向性を決めることです。

意識は部分しか感知できないため、部分への(かたよ)り、対象への過剰行動が起きます。そして心身全体を見失い、(やまい)の原因を作ることになります。多くの病は部分への偏りや過剰が原因によって起きる不秩序状態です。いずれも部分に執着し全体を見失(みうしな)っているからです。これは身体だけに限ったものではなく、心も同じです。

身体瞑想(めいそう)は、身体の各部分を想像力による観察を通して心身全体を感じ、秩序と調和を知覚する作業です。やり方は自由ですが、私たちの身体の各部分を一つ一つ観察していくのが基本です。以下は私が毎朝実践している身体瞑想です。

まず体を外の世界から守り、命を支えている皮膚から始めます。全身やけどで皮膚の1/3以上を損傷(そんしょう)すると死に(いた)ると言われています。人は通常人間の体の皮膚しか見ていないといってよいでしょう。皮膚の下に内在している、骨、筋肉、血管、脳、各種の臓器は見えません。皮膚が(おお)って守ってくれているからです。最近、皮膚は臓器(ぞうき)と言われるようになりました。人体最大の免疫器官であり、無数のセンサーが埋め込まれた感覚器官です。皮膚は臓器や内部の身体を外の種々の細菌、ウィルスから体を守り、その総重量は10㌔を超えます。人間の外側の表皮角化細胞は爪や髪と同じように死んだ細胞なのです。その死んだ細胞を見て美人だの美男などと私たちは言います。頭の先から足の指の先の皮膚を観察し、その働きを想像し、感謝してゆきます。瞑想とは()ぎ澄まされた想像力が描き出す世界のことです。

次は骨です。私たちの身体を支えてくれている土台です。もし足の指を一本骨折したとしたら、痛みの激しさに、歩くこともできなくなります。たかだか、身体全体の1000分の一以下の指の骨一本という部分すぎませんが、故障すると身体活動全体に支障をきたします。これが部分と全体の関係性です。部分は全体に影響します。また骨があるから体の姿勢を保つことができますし、二本足で大地に立ち、全体のバランスを取り、歩くこともできます。全体は部分によって構成されていることがわかると思います。意識は部分しか受信できないことが理解できたでしょうか。

次は筋肉や(けん)靱帯(じんたい)です。これらの働きで私たちは骨を動かし自由な動きができます。私はよく肩が()るので、肩を(さわ)りながら肩の筋肉に、ありがとうと声をかけています。そのように全身の筋肉を観察し、その働きに感謝してゆきます。

次は脳と神経です。脳は頭蓋骨(ずがいこつ)に守られ、脳との間に(ずい)(えき)が存在し、衝撃に耐えられるようになっています。脳の外側を覆っている大脳皮質は私たちの思考や見る、聞く、体を動かす、記憶するなどの働きを担っています。一瞬のうちに視覚野は外の世界の形や色を識別したり、聴覚野は音の種類や声を区別したりします。脳幹は生きるための呼吸、睡眠などの働きを担っています。脳内には億を超える神経細胞・ニューロンが存在し、そこから波状的に出ているシナプスの数は兆を超えています。そのシナプスとシナプスの間は無数の電気信号が飛び交い、脳全体としては無秩序に一秒間に10回近く振動し、混沌(こんとん)としています。それがある瞬間、混沌が統一された秩序状態を作ります。それが気づきであり、気づきの流れが意識であるとフリーマン(脳科学者)は言います。

また、神経細胞は脊髄(せきずい)に守られ、その管の中にはやはり(ずい)(えき)が流れ、衝撃から神経を守っています。その神経は体の隅々(すみずみ)まで末梢(まっしょう)神経(しんけい)として()(めぐ)らせ、体の異変、快・不快、傷つきなどを信号として意識に届けます。意識は、痛み、苦しみ、心地よさなどを受信し、方向性を指示します。

次はホルモンです。ホルモンは炎症を抑えたりして体を調整する恒常性(こうじょうせい)機能(きのう)の役割をします。(のう)(かん)の近くにある下垂体(かすいたい)ホルモンはメラトニンなどの働きにより睡眠の調整をしたりしています。(のど)の下あたりある甲状(こうじょう)(せん)ホルモンは、やる気などに関係しています。副腎(ふくじん)のホルモンはアドレナリンなどによって情動を調整します。性ホルモンは男女機能を調整しています。ホルモンは血液に乗って、必要なものを必要な臓器に届けます。

次は消化活動を(にな)う働きを想像観察してゆきます。食べたものは(あご)の骨や筋肉、口内(こうない)環境、歯、唾液(だえき)()(らい)の味の感覚(うまい、甘い、塩辛い、酸っぱい、苦いなど)など総合的な働きによって、口内で咀嚼(そしゃく)されます。そして食道の蠕動(ぜんどう)運動によって、下に降りてゆきます。その間には気管の入り口への誤嚥(ごえん)を防ぐ弁の開閉によって胃に届けられます。胃では数時間38度の温度で、食べたものが殺菌され、保管消化されます。食べ物の過剰を防ぐため2~6時間胃にとどまり満腹感をもたらします。もし次から次に食べ物が腸に流れていったら、腸が疲労し壊れてしまうからです。十二指腸で本格的な消化活動が始まり、膵臓(すいぞう)胆嚢(たんのう)酵素(こうそ)によって、血糖値(けっとうち)を調整したりして消化が進みます。約6メートルある小腸でさらに本格消化が始まり、血液に乗って肝臓に送られます。そこで加工・貯蔵され、血漿(けっしょう)を通して各臓器に栄養となって運ばれ、血漿(けっしょう)(すい)・血液は、細胞の排泄物(はいせつぶつ)を受け取り体内をめぐります。大腸では数十兆個の大腸菌によって消化吸収され、残物が直腸に()まるとサインによって便として排泄(はいせつ)されます。食べたものは口から入り、各消化器系の臓器をたどり約二日間の旅をし、全身の各細胞のエネルギーになります。普段は考えることすらありませんが、私たちはこうしたエネルギーのおかげで生きています。意識で生きているわけではありません。全体の細胞の統合された秩序を保った働きと調和で生きているのです。それを感じるが瞑想です。瞑想とは部分から統合された秩序ある全体を感じることなのです。

食べ物は消化され、血液を通して全細胞に運ばれます。しかし食べたものの中には、毒性なものや細胞に悪いものも含まれていますし、過剰な栄養分もあります。それらを浄化するのが腎臓(じんぞう)です。腎臓は1分間で1リットルの血液を浄化し身体を守ります。糖尿は血液の濁りに影響しています。その濁りがひどくなると腎臓の機能も壊してしまいます。食べ物はすべて栄養になりエネルギーに変わるわけではありません。栄養であり薬になると同時に毒にもなることを知らなければなりません。肝臓は食べ物を解毒(げどく)したり、保存したり約200の加工的な働きをしながら体を守り動かしています。リンパ管やリンパ節は外から入ってくる食べ物や空気の中の菌やウィルスから身を守る免疫(めんえき)活動をし、血液の浄化や水分調節し体を守ります。

次は呼吸器系と循環器系です。私たちは食べ物と呼吸で生きています。呼吸は体内に酸素を取り入れ二酸化炭素を外に出します。鼻から入った空気は(よご)れているので、鼻腔(びくう)(びくう)で鼻毛などにより、ほこりなどの汚れた空気が気管に入るのを防ぎます。アレルギー性鼻炎は、この鼻腔の働きの過剰反応と言われています。鼻腔を通過した空気は喉(のど)(のど)を通ります。この喉のリンパ球がウィルスや菌を駆逐(くちく)(くちく)します。この戦いに敗れると風邪やインフルエンザになったりします。喉を通過した空気は気管を通り肺に入ります。肺には約4億の肺胞があります。その肺胞の一つ一つの周りは無数の毛細静脈と毛細動脈に覆われています。肺胞に入った空気は、毛細動脈を経て、大きな大動脈に送られ心臓に入ります。心臓から鼓動によって動脈の中のヘモグロビンによって全身の細胞に酸素を届けます。そして二酸化炭素を受け取り静脈に乗って、心臓に戻り、やがて肺の周囲の毛細静脈に帰ります。それが肺胞に入り、吐く呼吸と一緒に外に出てゆきます。4億の肺胞は酸素と二酸化炭素の交換を行っています。こうして私たちは呼吸で生きています。

このようなの体の統合された秩序ある働きは、宇宙の働きと似ています。そして誰もが持つ尊い働きです。アインシュタインは、これらの働きを神と言ったそうです。ブッダは「神通之力」(じんずうしりき…目に見えない不思議な力)と言いました。こうした不思議な働きに畏敬(いけい)の念を抱きながら、自分の身体とその働きに感謝しています。以上が毎朝行っている私の身体瞑想です。そのあとに引き続き地球・環境瞑想を実践しています。

芝蘭の便り 「ひきこもり・不登校・心の不調からよみがえる」(来春出版予定) 第三章17より抜粋