自分が悪い方向に向かっていることのメッセージ…それが苦の感覚です。自分が悪い状態にあることを教えるために、私たちの神経は苦という電気信号を意識に送ります。苦は心に闇をもたらし、希望という光を遮り、私たちを迷いの海に漂流させたります。しかし、苦は自分が変われるかどうかのチャンスを与えてくれる絶好の試練です。それを契機に、自分を善い方向に変えることができれば、暗い心に光が差し込むように心は秩序を取り戻し、楽が心を潤してゆきます。人は、善い方向に変われる可能性を持った存在であると過去の偉人たちは教えてくれます。生きるとは希望を産み出すことなのです。
悪い方向に変わるのには、努力も正しい学びも必要ない
悪い方向に変わるのは、容易です。泥棒も、強盗も、詐欺も、いじめも、モラハラも、クレーム行為も、パワハラも、暴力も、殺人も、欲望の趣くままの行為だからです。それも生命の破壊的働きに支配された行為にすぎません。生命の破壊的働きである魔性に支配された生命の行き着く先は、苦しみが充満した地獄の世界です。人間は、始めから、その方向に向かうのではなく、時間の流れの中で、善くなっていこうとする心を失い、徐々に堕落し、悪い方向に傾いていった結果です。
表面に現われる行動には、それを支える心があります。見えない水面下で堕落が始まり、悪い方向に少しずつ傾斜していたのです。悪へ人を導くものは、悪しき言葉であり、悪情報であり、悪人であり、悪信念です。それらをまとめて悪知識と言います。また、悪い習慣とも言います。人はどんな言葉を信じるか、どんな情報を信じるか、どんな思想を持つか、どんな習慣を持つかで、善い方向にも悪い方向に向かい、病にもなり、健康にもなり、幸福にもなり、不幸にもなります。
自分を善い方向に変える条件1…善い言葉、善い書物に出遭い、よく考え想像力を働かせること
多くの人は、言葉や情報を吟味することなく、簡単に騙されたりします。なぜなら私たちは、思考する必要のない社会に生きているからです。社会が視聴覚中心の情報社会になっているからです。宣伝などの視聴覚中心の情報やAI情報は思考する機会を奪います。視覚への刺激の強さは、脳を麻痺させる力を持っています。視覚の刺激の強烈さは、残像を伴い、対象を印象深く心に刻ませ、素晴らしく思わせ、人を衝動的に行動させる力を持っています。
賢い人の条件の一つは、読書力があることです。読書は、読み方一つで、思考力も想像力も養えます。ただ学校の勉強のように、受動的勉強や読書は身になりません。本人の知りたい、善くなりたいという意欲がなければ肉化できません。書物には、悪書もあれば良書もあります。良書は人を高め、善い方向に変えてくれる書のことです。良書は少なく悪書は蔵に満ちているのが現状です。良書に出遭うことは、自分を善い方向に変える条件の一つです。見極める基準は、作者の人格や人間性、その内容の科学的真実性を見ることです。その意味で言えば、偉人の伝記や真理を究明した科学書は、ほぼ良書と言えます。私たちの精神世界を広げ、豊かに耕し、生き方を高めてくれるからです。偉人の言葉や真理の発見の集積である書(注1)は、人を善い方向に高め、幸福に導いてくれる最高の良書です。
(注1)偉人の言葉や真理の発見の集積である書…孔子の論語、ソクラテスの弁明(プラトン作)、ブッダの法華経、世親菩薩の成唯識論、科学書全般(ダーウィンの進化論、アインシュタインの相対性理論、ニコラ・テスラの書、ニュートン力学の書などの物理・天文・医学・植物・身体学などの真理を解明した科学書)、伝記ヘレンケラー、偉人の伝記など。
自分を善い方向に変える条件2…善い人との出遭い
人間は始めから人間ではありません。人に出遭い、人から多くのものを教えてもらうことによって人間になっていきます。この世で私たちが最初に出遭うの人は、母親です。母親の影響性は、何にもまして大きなものがあります。母の恩はどんな海よりも深いといわれるわけは、そこにあります。その人が、まともな人間であるかどうかを見究める条件の一つは、その人が親の恩を知っているかどうかを見ればわかります。カラスは、一人前になったとき、親に餌を運ぶ、恩鳥と言われています。恩を知らない人は、生命のレベルとして、カラス以下のレベルなのです。母親が私たちを産んでくれたおかげで、今、こうして私たちは存在できているのです。親の恩を知らない人を畜生以下と聖人が言われた意味はここにあります。例え、どんな母親であったとしても、私たちを9か月近く、母胎の中で守り育て、この世に送り出しくれたのは事実です。その恩はどんな動物も感じているものです。善い人は、恩を知りて恩に報いる人です。過去の偉人は等しく、親の恩を知る人でした。
善い人は精神を高めてくれます。善い人の言葉は正しく、純粋で美しい響きがあります。何より生き方に嘘がなく真っすぐです。そして私利私欲がありません。そんな人のそばにいると、誰人にも本来、内在する善性が触発され、人格が少しずつ薫育されてゆきます。逆に悪しき人のそばにいると、「朱に交われば朱くなる」というように、人間が低下してゆきます。
自分を善い方向に変える条件3…善い人の言葉を信じて実行すること
自分を善い方向に変える条件4…常に学び続け、常に実践し続けること
自分を善い方向に変える条件5…理想を持ち、その実現を誓って向上し続けること
自分を善い方向に変える条件6…よい習慣を身に付けること
人は善根を成せば必ず栄える(聖人)…人は善の行為を積み重ねてゆくなら必ず栄え幸福になってゆく
自分を善い方向に変わるのことを妨げるもの1…自分の心の恒常性を破れないこと
自分を善い方向に変わるのことを妨げるもの2…五感覚の欲望に流されてしまうこと
自分を善い方向に変わるのことを妨げるもの3…間違った言葉、情報、知識を信じてしまうこと
〇筆者の生命哲学研究歴… 広島大学総合科学部(一期生)在学中から、哲学、文学、思想、日本人の行動様式論、生と死の宗教(主としてキリスト教と仏教)、心理学、仏法生命哲学を研究してきました。深層心理学と仏法生命哲学研究歴は50年を超え、ここ10年は量子力学、身体科学と仏法生命科学(中心は法華経)の関係性を重点的に研究しています。学びの旅は今も続いています。